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【研究紹介】通訳を研究する ―広島国際映画祭

2024.03.05

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大学教員の主な業務は教育と研究ですが、その研究方法は、実験データの分析、統計の分析、未知のものに対する解読など、分野によって異なります。通訳・翻訳学を専門とする教員の場合、実際の通訳の現場や翻訳作業が研究につながります。

 

英語英米文学科の通訳専攻の学生と教員は、広島国際映画祭に毎年関わっています。学生は、字幕作成・パンフレットの翻訳・会場でのボランティアなどで貴重な体験を得ます。教員にとって、この映画祭への参加は研究の一部となります。

 

広島国際映画祭2023では、学生たちが字幕を付けた映画の上映に合わせてトークショーが開催されました。そのトークショーでは、教員二名(ジョン・マクリーンと北原アンドレア)は通訳と司会を務めました。

 

一作目はベトナム出身のマーカス・マン・クオン・ヴ監督の『メメント・モリ:大地』という作品です。末期がんを患っている若い女性とその家族を描いた、ストーリーも映像も美しい映画です。上映後のトークショーでは、司会者の日本語を監督に英語に通訳し、映画作りやこの作品に寄せる思い、自らの生い立ちなどを語っていただきました。通訳の役割は、司会者からの質問を正確に監督に伝えると同時に、監督の考えや感情を分かりやすく、かつ正確に会場の皆さんに理解していただくことです。そのために、発言内容をノートテイキングして、それを参考にしながら、監督の感情を加味して参加者の方々に伝える必要があります。もちろん、会場からの質問への応答も通訳の実践になります。

 

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二作目は『静寂の羽音』というメキシコ出身のリカルド・ソト監督の長編映画です。この作品の日本語字幕は通訳専攻の学生が手掛けました。主人公の姉妹がメキシコ革命のさなかにいかに生き抜くかを描いており、とても静かで、音や映像の美しい映画です。トークショーの司会はジョン・マクリーンが担当し、通訳は北原アンドレアが担当しました。司会者が英語と日本語で司会し、通訳が監督の言葉を日本語にして会場の観客に伝えました。撮影場所の裏話、メキシコのマフィアに関係する話、革命や戦争など、テーマは多岐に渡ったため、司会も通訳も、専門的な語彙力と歴史に関する知識だけではなく、長時間の集中力も必要となりました。

 

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このように「研究」と一言で言っても形は一つではありません。今後も学生と一緒にこのような経験を得ることは楽しみでもあり、勉強にもなります。