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造形デザイン学科新カリキュラムのねらい

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2016年に開設された造形デザイン学科は、2020年にカリキュラムの改定を行いました。新カリキュラムのねらいを学科内の2つのFD(Faculty Development)チームによる対談形式で解説します。

 


 

①新カリキュラムにデータサイエンスを取り入れた背景は?

 

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染岡
2014年に新学科構想が始まった時、データサイエンティストを養成するカリキュラム案も検討しました。ただ、当時は「データサイエンティスト」という言葉が一般的でなく、その具体的な役割をイメージできなかった事もあって具体的なカリキュラムの形まで仕上げることが出来ませんでした。

 

山下
当時、いくつかの大学の養成カリキュラムを見てみましたが、数学むき出しの科目名が並んでいましたからね・・・。もっとも、当時は本格的ディープラーニングAIが実用化されたばかりで、使えるAIがなかったという事情がありました。
今は我々が身近に使えるAIシステムが充実してきましたので、AIを研究・開発するというより、道具として使いこなすという観点での授業が可能となりました。

 

谷口
AI搭載ロボットとしてアイボ(sony)の飼育を始めました。2020年限定カラーモデルです(笑)。アイボのAIと接してみると、AIシステムはプログラミングがどうこうと言うより、AIを育てるという感覚が大切だという事がわかります。
ロボットとしてのアイボには視覚センサー、聴覚センサーや圧力センサー等、様々なセンサーが沢山ついていて、各センサーからの情報をAIが常に認知処理しています。今日のロボットは動くセンサーユニットとも言えますので、それぞれのセンサーにいかに質の高い情報・刺激を入れてあげるかが重要で、それがAIを育てるということになります。私たちのアイボはまだ赤ん坊ですがそのAIをどうやって進化させようか・・・教育係りの学生の皆さんと悪戦苦闘しているところです。

 

染岡
IoTの時代になり、インターネットの先につながれたセンサー群から大量のデータをリアルタイムで集める事ができますので、このようなビッグデータをいかにAIとつなぐかという感覚ですね。

 

山下
授業でも、従来のプログラミング教育をふまえ、機械学習やディープラーニングなどのAIの仕組みそのものをとりあつかうプログラミング実習から、様々なセンサーをネットの先につなげてリアルタイムでデータを取得するIoT実習等、AIシステムの実装・運用までをひととおり体験できる内容を準備しています。

 

谷口
AIを育てるためのデータの取得と処理(統計)も同様です。サンプルから全体を推測する推計学の基礎をふまえ、いわば全数リアルタイム処理ともいえるビッグデータの処理までを体験的に学べるよう準備しています。特にAIの教材となるデータをどのように取得しどのように与えるのかという感覚を身につけてもらいたいですね。

 

染岡
「データサイエンティスト」というとデータ分析の専門家のようなイメージがありますが、仕事はデータ分析だけでは終わりません。データ分析だけを行う人を雇って仕事をすると言う事は一般的ではありませんので、新カリキュラムもデータ分析の専門家を養成しようとしているわけではありません。
一方で、何らかの仕事をしていて、自分の仕事にあった分析をしてくれるAIを育てることができれば、AIがデータを収集して分析結果を示してくれて仕事をアシストくれるようになります。そうなるとデータ分析の専門家は必要でなくなります。
データの特性や分析そのものを理解し、AIを育て、AIのアシストを活用して仕事を進めることができる感覚と実際に使える能力は必要です。そのためにも、データサイエンスを理解し、インターネットの先のビッグデータにアクセスでき、AIを道具として使いこなしながら、自分の仕事(課題解決)に活用できる感覚を身につけてもらいたいのです。

 


 

②不確実性の時代になぜ「アート思考」が必要なのでしょうか??

 

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染岡
毎年のように聞く数十年に一度の自然災害、2020年のコロナ禍等、私たちは先がどうなるか予想がつかない、想定外の事態が続く不安な時代を生きています。
学科では、安田女子大学の普遍的教育理念のもと、AI等の技術の急速な進展を踏まえ、5年後、10年後の社会でも人間としての創造性を発揮し、社会のイノベーションを推進する人材を輩出したいと考えてきました。
ところが、2020年、私たちはコロナ禍によって数ヶ月で激変した社会を目の当たりにしました。今回の経験をもとに、10年単位の見通しによる長期計画とともに、今現在の学科の学びそのものを考える必要性を強く感じています。

 

田村
本学では新入生全員にノートPCを供与しています。これまでは長い時間をかけてガイダンスを行っていましたが、2020年はノートPCを引き渡しただけで、4月20日からオンライン授業が始まりました。新入生がアクセスできるのか不安でしたが、わずかな情報で初回のオンライン授業に出席してくれた新入生の皆さんを見て、ホッとしたというより本当に驚きました。流石はデジタルネイティブ・ジェネレーションZ世代の皆さんです。

 

池田
デッサン等の実習が、オンライン授業で実現できるのか? 緊急事態という中で、不安を感じる暇もなく、とにかく走りながら手探りで授業を進めるという事を体験しました。もちろん物理的に実施不可能な部分は差し替えざるを得ませんでしたし、おそらく失敗もあったと思いますが、新しい発見もありました。

 

田村
10年くらい前からビジネスの世界では、「VUCA(ブーカ)の時代が到来した」と言われるようになりました。 VUCAとは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)を合わせた言葉で、「予測不能な状態」意味しています。
VUCAの状況下ではこれまでの、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)をくり返す、PDCAサイクルが通用しないと言われています。変化のスピードが早く、予測不能な未来に対して計画は成り立たないからです。
一方、予測不能な事態に対しては、OODAサイクルが有効だとされています。OODAサイクルは物事をよく観察(Observe)し、方向づけ(Orient)し、意思決定(Decide)し、行動(Act)するサイクルをくりかえすもので、アーティストやイノベーターの思考サイクルとも言われています。

 

染岡
ビジネスの世界では論理的・分析的に課題を解決する「ロジカル思考」に加えて、直観的・総合的に課題を解決する「デザイン思考」が注目されました。「アートは創作が目的であり、デザインは創作を手段として、クライアントの課題を解決することが目的である」と説明をしていましたが、いずれも与えられた課題が出発点で「万人が望む正解」を出すことがゴールでした。一方、モノを所有し消費する時代から、コトやストーリーが求められる時代に移行し、個々人毎にカスタマイズされた新しいサービスが求められる時代となり、最近注目され始めたのがアーティストやイノベーターの「アート思考」でした。

 

池田
「アート思考」という言葉はそもそもアートの領域外からの言葉なので、作り手としてはある意味新鮮に感じるのですが、おそらく様々な課題、問題が発するメッセージと向き合い、疑い、更に深く探求することが「アート思考」なのかなと思います。例えばデッサンの授業では対象を観察することから始めます。形だけでなく光と影あるいは構造を観察し、全体を把握した上で何をどう表現するかの方向づけを行います。そこでは技法の修得も踏まえつつ、もう一歩踏み込んで自分なりのアプローチを模索し、テーマを探求し発見していくことで具体的な表現や制作が始まります。

 

田村
ロジカル思考やデザイン思考は課題解決を目的としているので、あらかじめ課題を用意しておく必要がありますが、アートの思考はテーマ(=課題)を発見する事から始まるんですね。
ロジカル思考やデザイン思考のゴールとされる「万人が望む正解」も、ロジカルに考えると個々の多様なニーズには対応できないので、本当の意味での正解ではない・・・

 

池田
ロジックやデザインが与えられた課題においてある意味「正解」を求めるのに対し、アートは「正解」を目指しません。例えば近代絵画においては「何を描くのか」ということから、印象派やキュビズムのような「いかに描くのか」ということに主題を移行しました。それは絵画ひいては世界の見方の常識を拡張しました。そしてデュシャン以降の多くの現代アーティストは絵画はもちろん、「アート」「作品」そのものの概念についての問いを今なお投げかけています。アートのゴールは正解ではなく、既存の常識や既成概念を揺るがす新たな「問い」をもたらすことかもしれません。

 

染岡
大学教育でも、問いに対する正解を求める事には長けていましたが、新たな「問い」を発見することは苦手でした。モノの価値の概念が崩壊し、大量生産・大量消費の時代感覚が行き詰り、既存の常識や既成概念が通用しない時代が来ています。
変化のスピードが速く、何が起こるのか予測不能なVUCAの時代において、行き詰った概念に新たな問いを見出し、既成概念を拡張する「アート思考」はこれからの時代を生き抜くために必要な素養なのかもしれません。まずは、日常のちょっとした事に興味を持ち、探求してみる事から全てが始まります。

 

 

 

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