- 教員紹介
- 学部長: 澤田 英三
岐阜県岐阜市の出身で、大学時代から広島を拠点にして、発達心理学の研究・教育に携わっています。幼稚園や保育所、学校などのフォーマルな場における子どもの発達だけでなく、地域などのインフォーマルな場で展開する子どもや若者の育ちに関心をもっています。
私たちの当たり前を科学する
研究とは、未だ知り得ていない事柄や現象に対して、そこに何があり何が機能しているのかを解明していく無限に続く活動です。中学の数学に出てきた「無限」には2通りあって、「無限大」という果てがわからない無限の広がりと、範囲が定まっていてもその間は無限にたどることができるπのような無限です。天文学が前者の無限を追究しているのだとしたら、心理学の研究は後者の無限を追究しているのだと思っています。人間の心の現象に対して、それまでとは違うとらえ方や切り口で科学的に迫ってみる。それが私の研究の姿勢です。
- 学科長 : 池田 智子
広島大学大学院の教育心理学専攻の学生だった頃は、色と単語、絵と単語、日本語と英語など、異なる2つの情報が、人間の情報処理過程でどのように関わり合っているのかについて研究していました。こういった研究を通して、言わば、「言葉にできるもの」と「言葉にできないもの」の関わりについて考えることはとても楽しいことでした。大学で教職についてからは、大学で心理学を学ぶことで獲得されるスキルや能力、大学生の学習観の変化、大学生の進路選択・決定過程でのメタ認知など、どれも大学生を対象としたテーマについて関心を持って勉強しています。今振り返ると、いつも一緒に勉強している学生たちに直接関わる具体的テーマに関心が移っていったのは、至極自然な流れだったように思えます。
行動変容のメカニズムを探る
心理学において学習とは、経験によって起こる行動の変化のことを指します。そして私の専門である学習心理学の立場では、基本的には人間はほとんどの行動を、生まれた後のさまざまな経験によって身につけるのだと考えています。私たちは日常生活の中で、望ましいあるいは望ましくないさまざまな行動を起こしますが、どのような経験をすることがそれらの行動に関わっているのかということを、単なる思い込みではなく、客観的に、そして徹底的に解き明かしていこうとする作業は、いつもわくわくする作業です。
- 西 まゆみ
広島大学大学院教育学研究科博士課程前期 教育心理学専攻修了・文学修士。公認心理師。臨床心理士。学生時代は、精神分析、特に、新フロイト派の理論と技法を学んだ。大学生のカウンセリング(学生相談)、スクールカウンセラーの仕事など、クライアントの大半は女性。遊戯療法や箱庭療法、最近は、コラージュ療法にも関心を持つ。
臨床心理学・女子大学生のカウンセリング、心理療法
臨床心理学の理論と技法を担当しています。臨床心理学の実践には、主なところでは心理検査と心理療法があります。心理検査については、知能検査や性格検査のうち代表的な検査が使いこなせるように、背景となる理論、実施法、結果の分析法を教えます。心理療法については、その基本的な理論を伝えて、実施の方法を入門的な部分だけは体験してもらいます。本格的な技法の実践については、大学院で担当している授業で学んでもらうことになります。
- 船津 守久
私は、広島県広島市の教育委員会の就学指導委員や広島市の障害児保育委員会の委員として、長年、障害児教育に関わってきました。また、広島大学教育学部障害児教育相談センター所長として障害のある子どもとその保護者の支援にあたり、現在安田女子大学において障害者・障害児心理学や特別支援教育論などの授業を担当しています。これからも、障害のある子どもとその保護者の支援とともに、障害児教育のあり方についての考えを社会に広く発信していきたいと考えています。
心安らぐ居場所をめざして
私たちは、障害を自分とは別世界のことと認識してしまいがちですが、障害と結びつく可能性が高い交通事故や病気などは私たちと切り離すことはできません。障害のある人だけが必死に頑張らなければいけない社会ではなく、私たち皆が自分の問題として障害を理解しお互いに支援し合える社会を目指しています。障害のある子どもへの理解と支援のあり方を、臨床心理学の領域から研究し、実際に支援を行っています。また、子どもの家族、特に母親への子育て支援を、保育園、幼稚園、学校、地域社会との連携を重視して研究、実践しています。
- 山本 文枝
企業に勤めた経験から働く人の心の健康に関心をもって産業カウンセリングを学び始めたのがきっかけです。大学院は広島大学の実験心理学教室で学び、宮﨑の私立大学では、教育心理学や学生相談、非常勤スクールカウンセラーを担当していました。本学では、環境心理学、対人関係論、心理実習、大学院臨床心理学コースを担当しています。
大学生のコミュニケーションの力を伸ばす臨床心理学的アプローチ
発達障がいのグレーゾーンの人の存在を考慮した大学生のコミュニケーションの力を伸ばす方法について研究しています。これまで、グループディスカッション場面でグレーゾーンの人のやりにくさや支援方法を検討し、“話し合う”ときにスマートフォンで使えるアプリケーション「会話に花を咲かせよう」を作成しました。グループディスカッションは、難しく感じている人は多いのではないでしょうか。障がいにかかわらず、すべての人のコミュニケーションにおける心理学的支援のユニバーサルデザインをめざします。
- 藤原 裕弥
広島県広島市出身。広島大学生物圏科学研究科博士後期課程を修了し、2014年より現職。大学時代、自分で仮説を立て、それを科学的に検証する「研究」の面白さに魅かれ、気づくと大学院を修了していました。これまで不安や抑うつといった否定的感情のメカニズムについて、また感情と心身の健康の関係について研究してきました。
身体や行動から感情という心の機能について考える
心理学は、これまでに目に見えない心を調べるさまざまな方法を開発してきました。感情心理学の領域では、感情を感じることで生じる心臓のドキドキや、目が泳いだりする反応を専門的な機械を通して測定する方法が使われてきました。このように身体の状態を調べることで、感情などの心理状態を知ることができます。私は、不安や抑うつなどの不適応につながる感情だけでなく、笑いや喜びなどを感じているときの身体反応や行動を調べながら、感情が生じる仕組み、生じた感情が私たち自身にどのような影響を及ぼしているのかについて研究しています。
- 宮崎 久美子
徳島県出身です。看護教員として10年間、養護教諭として20年間学校現場で勤務してきました。大学教員としては徳島大学を経て安田女子大学で養護教諭養成を主に担当させてもらっています。大学院時代に出会ったケアリングという概念に感銘を受け、看護の本質とされるケアリングを教育の現場で養護教諭が展開している現象を具現化していくことが私の研究テーマです。
養護教諭のアイデンティティとは何か
我が国の養護教諭は学校教育法のもと、各学校に配置されるよう定められています。これは世界全体で日本だけです。養護教諭は、児童生徒の心身の健康問題解決のために学校現場での役割を担っています。隣接する学問である教育学、医学・看護学、心理学等の知識及び技術を踏襲しながら養護学の構築を目指します。
- 生塩 詞子
広島大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学。在学中は新フロイト派(対人関係精神分析)の理論と技法を学びました。公立中学スクールカウンセラー,単科精神病院,情緒障害児短期治療施設(現在の児童心理治療施設)などで臨床経験を積みました。大学院修了後は,長崎の私立大学に16年勤務していましたが,その期間中,被害者支援などにも携わっていました。
投影法を用いた人格査定,青年期の心理
色と感情の関わりに興味を持ったのがきっかけで,投影法検査,特にロールシャッハ・テストにあらわれる情緒面について研究をしてきました。現在は臨床現場が小児科の発達外来で,知能検査や発達検査,保護者の方のお話を伺うことが増えてきているため,発達障がいに関するアセスメントや支援についても関心があります。 大学で長年勤務してきたこともあり,学生の皆さんが属する青年期に関するテーマで研究を行うこともあります。現在は,心理専門家を目指す学生・大学院生の演習や実習を通した初学者の学びについても関心があり,研究を進めているところです。
- 金坂 弥起
神奈川県横浜市出身。九州大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学後,10年間,民間の単科精神科病院にて常勤臨床心理士として勤務いたしました。私の臨床経験のすべては,そこで培われたと言っても過言ではありません。その後,大学教員に転職して,本学には2020年より着任いたしました。臨床心理士,認定心理士,公認心理師。
「多様性・個別性・独自性へのリスペクト」
「多様性・個別性・独自性へのリスペクト」とは,「10人いれば10通りの個性がある」,「誰ひとりとして誰とも同じではない」という事実を最大限尊重することを意味しています。そうした大前提のもと,これまで長い間,精神科心理臨床に従事してきたことから,現在の具体的な研究テーマのキーワードは,臨床心理学,精神科心理臨床,多職種連携協働です。また,ここ数年,地域支援活動として中高生や対人援助職を対象にしたゲートキーパー養成講座(自殺予防教育)にも携わっております。大学教員に転職後は,心理学教育にも強い関心があり,『心理学をまじめに考える方法』,『大学で学ぶ心理学』(いずれも誠信書房)といった翻訳書を刊行しております。
- 齋藤 大輔
人の「こころ」をなんとか見ることができないか?と思い、生理心理学を専攻しました。大学で、脳に生じている「こころ」を見るために、脳波や心電図、さらには近赤外線分光装置や機能的MRIを使って研究を続け、だんだんと「こころ」が見えるようになってきました。こうしたことから、「こころ」に関係した脳のはたらきや脳の不思議、「こころ」を研究する楽しさを沢山の人に伝えるために、大学の先生をやっています。
「こころ」はどこにあるのか?
「こころ」のはたらき(認知活動や精神活動)によっておこる身体反応(脳の神経活動・血流・心拍・発汗・ホルモン分泌の増減など)を調べることで、「こころ」がいつ・脳のどこで生じるのかを研究しています。他にも、普段の生活が「こころ」と脳にどういう影響を与えるかについても調査し、どんな環境(早寝早起き、家族団らん、休日の過ごし方など)が、どのように「こころ」と脳に影響を与え、どうすれば楽しく生きられるのかを明らかにしたり、虐待などの不適切な養育がなぜいけないのか、などを科学的に調べています。
- 新沼 正子
企業における安全衛生管理や地域における一次救急医療に看護師として携わってきました。これまで、幼児から大学生の健康管理に関わる問題点を研究分野に求め、学生の生涯にわたる健康の重要性と、日常生活における健康への意識の高揚に努めてきました。
担当科目は、基礎看護学概論、看護救急処置、学校応急処置、学校応急処置演習、看護学臨床実習指導、看護学臨床実習、子どもの健康と安全他です。
子どもの生活の背景にあるリスクに気づく
子どもの体の不調やケガなどに対して、養護教諭が大切にする事は、子どもの心身の状態を見極め対応するとともに、不調の訴え、ケガ等の背景にあるものに思いを巡らせることです。そこには、ケガや疾病などに対する医学的な知識はもちろん、心のケアをするうえで、子どもたちのちょっとした変化を見逃さない観察力が求められます。さらに、コミュニケーション力、包容力や冷静な判断力により、子どもたちの心身のケアにあたることになります。また、同時に関係する教職員や外部専門機関との連携・協働も必要となります。大学生活や講義を通して、確かな知識と教養、さらに豊かな社会性等を専門的に学びます。
教員・研究テーマ
- 氏名職名研究テーマ学位
- 澤田 英三教授(学部長)心の発達を現場(フィールド)でとらえる修士(文学)
- 池田 智子教授(学科長)学習心理学(記憶、言語、学習観)博士(心理学)
- 金坂 弥起教授臨床心理学、精神科心理臨床、多職種連携協働修士(教育心理学)
- 新沼 正子教授小児保健・小児看護、養護教諭の看護技術に関する研究修士(学術)
- 西 まゆみ教授大学生の心理療法、子どものプレイセラピー修士(文学)
- 船津 守久教授障害のある子どもへの支援、家族への子育て支援博士(医学)
- 宮﨑 久美子教授養護教育学、看護教育学、学校保健に関する研究修士(看護学)
- 山本 文枝教授大学生のコミュニケーション能力育成に関する研究修士(心理学)
- 生塩 詞子准教授投影法を用いた人格査定、青年期の心理修士(心理学)
- 齋藤 大輔准教授生理心理学、こころと脳の働きとの関係を調べる博士(医学)
- 藤原 裕弥准教授感情心理学、健康心理学、不安の行動科学博士(学術)