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  • 授業紹介

ゼミナール紹介

演習テーマ漢字書法研究・書写書道教育研究

  • 谷口 邦彦 

    筑波大学芸術専門学群書コース卒業、同大学院芸術研究科書分野修了。県立高等学校で7年、広島大学附属中・高等学校で8年間、教諭として勤務。2003年に安田女子大学に就任。漢字作品を中心とする書作品の制作に取り組むほか、小中学校の書写と高等学校の書道授業の改善法を研究中。

大作作品制作と並行して、各々の関心のあるテーマを追求していく

 卒業研究は、論文と作品の両方を制作します。本学科の学生たちは、先輩との結びつきが深く、先輩の論文発表や制作活動を見学できるため、ゼミに向けての心の準備が早くからできるのが特徴です。私は漢字書法と書写書道教育を専門としているため、ゼミには教師をめざす学生が比較的多く集まります。
 作品制作では、書の古典の全字臨書など時間をかけて大作に挑戦します。論文に関しては、ゼミの枠に捉われることなく自由にテーマを選べます。これまでの卒論テーマは、「左利き学習者への指導」や「中国書道史に関する研究」、街中の看板から考察する「書体の種類と効果に関する研究」、「江戸文字の研究」などさまざま。
 本学科の教員は連携し、学生が望む研究テーマを深めていけるよう、文献情報をはじめ、インタビューやアンケートの手法、現地調査に関するアドバイスなど、個々に合わせてサポートしていきます。

書道の勉強法、指導力、協調性と確かな力を身につけよう

 学生には、卒業後も書道の勉強を続けてもらいたいと思っています。そのため研究を通じて、1人でも勉強を続けていけるようその方法はもちろん、吟味できる観察眼や学習意欲の高め方などを指導しています。ほかにも技能とともに、理論的な部分も深めていきます。これは車の両輪のようなもので、子どもたちを指導するときに必要不可欠です。従来の1対1の指導法ではなく、他の授業と同じように子どもたち全員へ同時に伝え、互いに評価し合える授業をつくる力の基礎になると私は考えています。
 また深い信頼で結びついたゼミの仲間をはじめ、培った協調性やコミュニケーション力も大事なもの。社会に出てからあなたの支えになると思います。

  • 谷口先生が執筆に関わった中学校書写の教科書と、ゼミの学生も開発に協力した書写用の小筆

ゼミナール紹介

演習テーマ漢字書法・書道教育研究

  • 信廣 友江

    安田女子大学文学部日本文学科卒業。神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。広島県立高校教諭として勤務の後安田女子大学へ。故井上桂園先生に師事し、漢字書を中心に作品を制作。博士論文テーマは「占領期における「習字」教育の存廃に関する研究」。

問題意識を取り出して、新規性ある研究へと発展させよう

 ゼミでは大学4年間の集大成となる卒業研究・卒業作品に取り組みます。書道の理論と実作については、基礎から応用へと順に学修し、多方面にわたる書の分野を学んで最終学年を迎えるのですが、それでも具体的にテーマを絞り込み、研究視点を明確化していくのはなかなか大変です。そういうとき、私はいろんな質問をしながら一緒に考え、一緒に資料を読んで、一人ひとりの問題意識の核心を自分の手で明らかにしていってもらいます。時間をかけて自ら得た新規性あるテーマは、研究の枠を飛躍的に広げ深めてくれます。中世の卒塔婆の書に着目して、実際に現地の博物館で特別見学をさせていただき、筆致に日本書道の粋を見つけた例、手応えある書法研究を求め、明治の書人に繋がる方との縁を得て未知の資料と向き合った例、等々。こうした研究は作品づくりにも活かされ、意欲的な卒展作品を生み出しています。
 ゼミテーマは「書道教育」等としていますが、こだわりはありません。一人ひとりの個性を育て、可能性を伸ばすゼミを目標としています。大きな意味での「書道教育ゼミ」です。

まず「知る」ところから ―まだ見ぬ自分に出会い、育て、人間力を培う―

 自分について知っている部分はほんのわずか。実は思いがけない適性を持っていて、ただ気づいていないだけということもきっとあるのではないでしょうか。長期にわたって取り組む卒業研究は、そんなまだ見ぬ自分に出会い、育て、社会人として逞しく生きぬく力を培う大きな機会でもあります。
 自分の可能性を拓くために、その土壌となる基礎力養成は大切です。書人研究、古典研究、歴史研究……と、書に関わることを幅広く学びましょう。自らの知見を広げ深めるところから、自らの興味関心は引き出されていくことと思います。
 書道学科の前身、日本文学科書道専修の礎を築いた故井上桂園先生(1903~1997)は、戦前、国定教科書第5期本国民学校(小学校)「芸能科習字」手本を執筆されるとき、褚遂良筆《孟法師碑》をもとに、学びやすく教えやすい書であることを第一とし、子どもたちを元気づけるような生気ある筆致、情操面を配慮した品格高い手本を書かれました。それは戦後の書写書道へと継承され現在に至っています。
 こうした、ごく近い過去の中にもたくさんの学びのヒントがあります。まず多くのことを「知る」ところから始めてみましょう。

  • 戦後教科書の典型をつくったとされる、井上桂園先生執筆の国民学校「芸能科習字」教科書と教師用書

ゼミナール紹介

演習テーマ漢字書法・東アジア書道史

  • 増田 知之 

    京都大学文学部人文学科歴史文化学専攻東洋史学専修卒業。同大学院文学研究科歴史文化学専攻東洋史学専修博士後期課程修了。博士(文学)学位取得。博士論文のテーマは「明代書法文化史研究―法帖刊行に見る「書」文化の諸相―」。2014年に本学に着任。

多様な書の世界から関心のあるテーマや作品を選び、自ら表現する

 書道学科は1年次より3年次にかけて、基礎から応用、実技から理論にいたるまで、書に関する様々な事柄を幅広く学びます。その過程でおのずと自分自身が興味を惹かれるテーマや作品が見つかるはずです。ゼミでは、それらについてより専門的に研究し、また作品制作を進めてゆきます。
卒業論文については、先行研究の収集・分析、問題点の抽出からテーマに沿った解決法、更には論文執筆の細かい方法にいたるまで、丁寧に指導します。またテーマは、中国・日本・朝鮮を問わず、書文化が広がった「東アジア」全域を対象とします。ダイナミック、かつ、多様な書の世界を自分なりに跡づけてゆきましょう。
 作品制作では、古典作品の臨書から漢字かな交じり書を含む創作作品まで、また小品から大作まで、多様な作品を制作します。古典表現の土台にオリジナリティを加味した、深みのある作品を目指しましょう。

柔軟な発想を身につけ、強い推進力で課題をクリアしてゆこう

 書は諸学問の中でも、とりわけ豊かな学際的広がりを持っています。芸術、教育、文学、歴史など、さまざまな分野を覆う巨大な学問体系といってよいのかもしれません。換言すれば、各方面からいかようにもアクセスすることが可能であり、「光」の当て方によって多様な表情を見せるのが、書の持つ独自の魅力なのだと思います。
 このような書を専門的に扱う本学科のゼミを通じて、書の面白さを実感するだけではなく、ものごとをより広い視野で捉える多角的な視点、問題を解決に導くための柔軟な思考や発想、そしてそれを推進していく強いモチベーションなど、卒業後の「自己実現」にも通ずるものを養ってもらいたいと思っています。

授業紹介

  • 楷書Ⅰ・Ⅱ

    様々な表情をもつ正式書体

    漢字書体のうち最も遅く成立し、現代社会においても正式な書体として通行する楷書。その代表的古典「孔子廟堂碑」「九成宮醴泉銘」をはじめ、北魏の造像記、唐の褚遂良・顔真卿など、幅広い楷書の表現法を学びます。

  • 行・草書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ

    豊かな書表現の第一歩

    行・草書は実用の世界からスタートした書体。芸術性豊かな表現が可能で、古来多くの名筆が生み出されてきました。そのトップクラスの古典、「蘭亭序」「十七帖」等を通して行・草書の基礎的表現技法を学びましょう。

  • 篆・隷書Ⅰ・Ⅱ

    プリミティブな古代文字の世界へ

    紀元前十四世紀ごろに生まれた最古の書体「篆書」。そして、それが簡略化してできた「隷書」。他の書体にはない強い象形性・記号性を有します。この独特の造形を活かして、素朴で大胆、知的に魅せる作品を創ります。

  • 仮名Ⅰ・Ⅱ

    「日本の美」をあなたの手で創る

    しなやかな筆線によって、流麗・優美な世界を創りだす仮名。この書体は、平安時代に生まれた日本独自の芸術としても注目されます。連綿(つづけ書き)なども学び、「大人らしさ」を感じさせる表現を修得しましょう。

  • 漢字仮名交じりの書

    未知の自分を言葉で紡ごう

    漢字と仮名の調和をめざす表現が漢字仮名交じりの書です。古典に依拠しながら制作を試みるほか、各自のイメージに沿って新しい表現を目指し試行錯誤していきます。「ろうけつ染め」など伝統的な手法にも挑戦します。

  • 書道特殊実習Ⅰ~Ⅵ

    アクティブに学んで書風を確立

    三学年が縦割りグループで活動し、協働しながら課題に取り組みます。「通い合宿」で集中的に書き込み、基礎基本を確実にします。また、「夏の創作展」や冬の「書道学科展」への出品を通して書風の確立を目指します。

  • カリグラフィックプレゼンテーション

    書とグラフィックデザインのコラボ

    グラフィックデザインの視点から書をとらえ、ロゴマーク、オリジナル名刺、筆による英文タイポグラフィの開発、マーケティングにマッチングした商品ラベルの企画など、書を社会に生かすための実践力を身につけます。

  • 書写Ⅰ・Ⅱ

    書くことの楽しさを子どもたちへ

    小中学生への文字指導は国語科の書写で行われます。書写の内容を知るとともに、子どもの書字習得の過程を考究します。さらに、将来の国語教師や書塾教師を想定しながら子どもへの指導法も合わせて学習していきます。

  • 作品研究

    自分の<個性>を表現しよう

    視覚芸術として書は広い表現領域を持っています。基礎科目で修得した各書体の技法や知見の上に、古今の作例・造形・線質等、多方面からの学びを重ねて、あなたの個性が光る創作作品制作のポイントを会得しましょう。

  • 表具と修復

    魅力あふれるさまざままな表装

    古く中国に成立した表装の方法は、我国にもたらされて、美術品としての価値を持つようになりました。表具の理論と実践を通して、理想の表装とはどのようなものなのか、実物を見ながら一緒に学びましょう。

  • 古典研究

    古典の技法を実践に生かす

    日中各時代の古典の概要を体系的に理解し、より広い視点から書道史を通観します。また、篆・隷・楷・行・草の各書体にわたって種々の名跡を鑑賞するとともに臨書研究を行い、高次の作品表現法の習得を目指します。

  • 水墨画

    自分の心境を水墨で表現する

    昔から「書画同源」「書画一致」と言われてきました。書も画も同じ筆によって、同じ線で表現するからです。この授業では、四君子と呼ばれている蘭・竹・梅・菊を水墨で描き、自分の心境を表現することを学びます。

  • 書道概論

    多様な書の世界へのいざない

    豊かな学際的広がりをもつ書の特質について、書体・書法・歴史・文化・教育・表現などあらゆる角度から検討を加え、それぞれの基礎的事項を総合的に学んでゆきます。また、適宜実習を通して書の多様性を体験します。

  • 書道史Ⅰ・Ⅱ

    書文化発展の軌跡をたどる

    中国に生まれた書は、悠久の歴史の中で様々な発展を遂げます。また、その影響を受けつつも独自の展開を示した我国日本。実際の書跡とそれを評した書論により組み立てられる書道史のダイナミズムを詳細に跡付けます。

  • 書論

    書法理論の奥にあるもの

    中国では、六朝時代(魏晋南北朝)に書論という分野が成立します。これが我国にも受容され、江戸時代には研究が盛んになりました。特殊な用語があって難解ですが、ことばの奥義とその背景にある文化を学びましょう。

  • 執筆理論

    筆の持ち方で書が変わる

    書の表現は、筆の持ち方、腕の構え方に大きく影響されます。中国と日本ではその考え方や習慣が異なり、また漢字と仮名とでも違っています。本講義では、様々な古典を通して執筆法とは何かを正しく理解していきます。

  • 書道実地研究

    古都で「ホンモノ」に触れる

    平安古筆を数多く所蔵する陽明文庫、多種多様な中国の文物が実見できる藤井有鄰館、清人の書跡の宝庫である観峰館など、京都・滋賀をめぐる「ホンモノ」志向の研修旅行。ここで培った経験を卒業研究に生かします。

  • 篆刻・刻字

    立体へと繰りひろげる書の表現

    篆刻の字法、章法、刀法の三法を中心に、篆刻の基本技法を習得します。また、素材(木材を中心)に文字を写し取り刻す、刻字の技法も学びます。篆書に限らず様々な書体を駆使しながら独自の表現を追究していきます。

  • 鑑賞

    さまざまな美術品のすがた

    中国は世界に稀な悠久の歴史を有する国です。その中国には独自に展開した芸術作品が多く伝来しています。それら一つ一つを取り上げて、鑑賞の方法・美の根源を考察してゆこうと思います。

  • 書道と芸術

    「伝統」をつくった近代

    明治以降、西欧の文化・思想が日本に入り、書道を取り巻く環境が大きく変化しました。本講義では、近代の文化・芸術を概観しながら、書の見方やとらえ方について多様な視点から問題提起を試みます。

主な卒論テーマ

  • 古代文字の美-鳥蟲篆とその周辺-
  • 中国の装飾文字-飛白の成立とその展開-
  • 西域出土文書の書道史的研究
  • 集王聖教序の拓本比較
  • 米芾書法の形成と後世における受容
  • 董其昌の学書傾向
  • 清朝碑学派の研究
  • 趙之謙-逆入平出の筆法と後世に与えた影響-
  • 水墨画研究-南北二派-
  • 道風の書にみる和様の美意識
  • 日本における欧陽詢書法の受容
  • 茶掛の文化史的意義
  • 中世の遺跡発掘資料にみる卒塔婆の書-阿倍野筋化遺跡資料を中心に-
  • 子規と書-生き抜いた三十五年とその書境-
  • 中林梧竹研究-書風の変遷過程について-
  • 戦後の前衛書運動をめぐって
  • 芸術科書道の授業改善について-言語活動を通して-
  • 書写教育におけるパフォーマンス評価の可能性について
  • 書道におけるホリスティック教育へのアプローチ
  • 台湾における学書の在り方について
  • 欧米における書道受容についての一考察
  • 書道療法のこれからの展開をについて
  • 名謁・名刺について
  • 江戸文字研究
  • フォントの種類と効果に関する研究
  • 利き手と書