

【論文発表】加齢に伴う免疫機能低下に関わる新しいメカニズムを発見!
2026.05.20
分子生物学分野の石川裕規教授が最終・責任著者を務める論文が国際誌「Frontiers in Immunology」に掲載されましたのでお知らせします。本論文は石川教授をはじめ、本学科の玉井美保助教が沖縄科学技術大学院大学(OIST)、放射線影響研究所、理化学研究所・名古屋市立大学大学院に所属する研究者らと実施した共同研究の成果となります。
本論文では、加齢によって免疫機能が低下する原因の一つとして、T細胞の代謝を制御する「PDHK1」というタンパク質の役割を明らかにしました。高齢になると感染症やがんにかかりやすくなることが知られていますが、その仕組みは十分に解明されていませんでした。
本研究では、若いマウスと高齢マウスのT細胞を用いて、細胞内のタンパク質量の変化を質量分析により網羅的に解析しました。その結果、代謝に関わる重要な因子であるPDHK1が、高齢のT細胞で顕著に減少していることが明らかとなりました。
通常、T細胞は刺激を受けると、PDHK1に依存して糖代謝を急速に活性化することで短時間に多くのエネルギーを生み出します。しかし、高齢のT細胞ではこの糖代謝の誘導がうまく起こらず、さらにミトコンドリア機能の低下も加わることで、十分なエネルギーを確保できない状態にあることが示されました。
さらに、若いT細胞においてPDHK1を人工的に減少させると、細胞の活性化やサイトカインの産生が低下し、細胞の生存率も低下しました。一方で、高齢のT細胞にPDHK1を導入して発現を回復させると、免疫機能、さらには細胞の生存が回復することが確認されました。
これらの結果から、加齢に伴うPDHK1の減少が、糖代謝とミトコンドリア代謝のバランスを乱し、その結果としてT細胞の働きを低下させることが明らかとなりました。PDHK1を標的とすることで、高齢者の免疫機能改善につながることが期待されます。
【発表論文】
題名 :Age-related reduction of pyruvate dehydrogenase kinase 1 impairs T cell responses
(加齢によるPDHK1の減少がT細胞の働きを弱める)
著者 :Kalra RS, Tamai M, Sarker S, Han Y-Q, Miyagi M, Sasaki D, and Ishikawa H
掲載誌:Frontiers in Immunology, 11 May 2026: 1800870
(https://doi.org/10.3389/fimmu.2026.1800870)
