

【論文発表】塩田先生の論文が国際誌に掲載されました
2025.12.01
塩田教授の研究成果をまとめた論文が国際誌に掲載されましたのでお知らせします。雪印メグミルク株式会社、福島大学の研究者との連名での発表です。
論文の概要については以下のとおりです。
ナチュラルチーズは微生物の代謝により、おいしさが生み出される発酵食品です。世界で広く愛されているカマンベールチーズは白カビの作用により特有の風味が形成されます。本研究では、白カビチーズの代表的な2製法(伝統的製法とスタビライズ製法)で調製したモデルチーズを用いて、熟成中に発生する呈味成分の変化を分析することで、製法間の風味形成機構の違いを解析しました。熟成期間の異なるモデルチーズを調製し、官能評価(酸味とうま味)およびLC-MS他による成分分析を行い、経時変化を評価しました。さらに、MALDI-TOF MSを用いた質量分析イメージングにより、うま味成分であるグルタミン酸と酸味成分である乳酸について、チーズ内での局在性を評価しました(図1)。官能評価と各種成分分析結果より、伝統的製法はスタビライズ製法よりもグルタミン酸の生成量が多く、うま味が強いなどの特徴が示されました。また、質量分析イメージングより、熟成中にうま味に関連するグルタミン酸は白カビが存在する表面において増加し、乳酸は表層領域から中心部に向かって減少する様子が確認できました(図2)。この結果は、質量分析イメージングにより、チーズ代謝物の生成挙動を可視化した世界初の成果です。本技術は、多様なチーズの代謝機構の解明に応用でき、おいしさの見える化などにつながることが期待できます。なお、本研究報告は掲載誌のEditor's choiceに選定され、海外の専門分野の先生方から注目される成果となりました。
【発表論文】
題名:Mass spectrometry imaging of the distribution of generated compounds during ripening in Camembert cheese produced using a typical manufacturing method.
(代表的なカマンベールチーズ製法における質量分析イメージングを用いた呈味成分の熟成による局在性の変化)
著者:T. Ishihara, H. Yamazumi, S. Taira, M. Shiota
掲載誌:Journal of Dairy Science 108(10) 10586-10599. (2025)
図1 ナチュラルチーズの質量分析イメージング解析方法

図2 カマンベールチーズの熟成による呈味成分の組織内局在性の変化