

私の研究~齋藤大輔(神経・生理心理学)~
2020.06.04
私の研究領域は、神経・生理心理学と言われる基礎心理学の一分野で、主に生体から得られる生理的信号(脳の神経活動を示す脳波や、脳内の血液の流れなど)と、こころの働きの関係を調べています。いわゆる「脳科学」とも言われる研究分野であり、人のこころを理解するためには、脳の神経の電気的活動が生み出す脳細胞の働きの理解が不可欠であると考えています。
またそれだけではなく、人体から得られたさまざまなデータとエビデンスをもとに脳を理解することは、こころの理解のみならず、人間を総合的に理解することであるとも考えており、心理学だけではなく医学や生物学などの異分野や関連諸領域との連携・融合を積極的に進めながら、人間の総合的理解を目指しています。
下の写真は、小学校に入学前の子どもを対象として、年齢とともに、脳の形や働きがどのように変化していくかを調査しているところです。
磁気共鳴画像装置(MRI)という装置を使って、脳の構造や脳血流の変化を観察しています。この装置を使って調べることで、子どもの成長や、運動技術・認知能力の獲得によって、脳のどの場所が使われるようになるのか?脳のどの場所が大きくなっていくのか?などを知ることができます。
この装置は、人体に悪影響を与えることなく、脳の形や血流を高い精度で調べることができるのですが、とても測定音がうるさくて、狭苦しいという欠点があります。そこで、MRI装置に入ってもらって脳を計測するために、その特性を逆手に取り、宇宙船やロケットに乗り込んでミッションをこなす、アトラクションのような研究環境設定にしています。テレビゲームや本当に宇宙飛行士のトレーニングを受けているような感覚で心理実験の課題に取り組んでもらえるので、非常に実験がうまく行っています。(そのために、筆者[青色の服]と同僚[オレンジ色の服]は、宇宙船の整備士と操縦士というていで実験を行い、子どもにも楽しんで参加してもらっています。
こうした研究を行うことで、注意機能の発達に関わる脳部位が明らかになり、脳の形が年齢とともにどのように変化していくか、も明らかになっています。これらの知見により、人間の成長・発達のメカニズムを知ることができますし、いつどのタイミングで技能の獲得を行うとうまくいくのか?といったことが分かってきます。このような研究成果を教育現場や社会生活に還元することで、より良い教育や生き方について貢献ができると考えています。
【子どもの脳の発達を調べる実験の風景】