

公共経営学科授業紹介:『公共経済学』
2021.11.08
皆さん、こんにちは!『公共経済学』を教えている、松本武洋です。
10月に衆議院総選挙があり、新しい国民の代表が決まりました。総選挙では、私たちは1人あたり2票を持ち、小選挙区と比例代表制選挙区(比例区)にそれぞれ一票ずつを投じました。そして、小選挙区では選挙区の候補者のうち最も得票数の多かった候補が当選し、比例代表制選挙区では、各政党の得票数をドント式と呼ばれる方法で配分して各政党の当選者数が決まります。
皆さんのなかには、この衆議院総選挙が過去に制度変更を経ていることを知っている方もいるかもしれません。現在の制度は1994年に導入されましたが、それまでの総選挙はいわゆる中選挙区という、選挙区から複数の当選人を選ぶ方式で行われてきました。
つまり、私たちの代表を選ぶ方法は決して一つではなく、様々な方法が考えられるのです。
特に今回の総選挙の小選挙区では、与党の連合に対抗して野党が共闘を組み、多くの選挙区で接戦が繰り広げられました。一選挙区当たり一人の当選人を決める小選挙区において、最も得票数が多かった候補者が当選することは当たり前のように思えてしまいますが、本当にそうなのでしょうか。
仮に3人の候補者がいるとします。このようなケースでは、当選人は総投票数の過半数を得られずに当選することがしばしばあります。この場合、その当選人を支持しない人2人の票を合わせると過半数を上回ることになります。仮に当選しなかった2人の政策やプロフィールが当選人とは全く異なり、さらにこの当選しなかった2人の政策やプロフィールが極めて似ていたら、どうなるでしょう。当選人に投票した人とは全く政策の異なる、しかも、同じような政策を打ち出していた2人の得票が過半数を上回るのだから、当選者の政策に不満を持つ人の方が多くなってしまう、という可能性があります。
公共経済学では、このように当選人の決定方法が有権者の意識を反映できている制度になっているかどうか、さらにはもっと良い方法があるのではないか、といったことを検討します。
一方で、選挙制度は候補者の行動に影響を及ぼすことも知られています。小選挙区制では二大政党制が成立しやすいことが知られていますが、比例代表制選挙区があることなどにより、我が国には現在も複数の中小政党が存在します。
このような選挙の経済学は、単なる思考実験ではなく、実際の選挙制度を決める際の参考にされることもしばしばあります。
公共経済学の10月の講義では、このような選挙の経済学を具体的な事例も挙げながら学生の皆さんと一緒に検討しました。公共経営学科の公共経済学は、行政の実務や公共の経営学との関係にも言及することで、他の分野とのつながりを学べるように工夫しています。