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公共経営学科 授業紹介『卒業研究I』 青木克仁ゼミ

2022.06.13

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公共経営学科では、3年次より『卒業研究I』(通称「ゼミ」)が始まります。公共経営学科には、どのような「ゼミ」があり、それぞれのゼミでどのような取り組みを行っているのかを紹介していこうと考えています。



ゼミ紹介その2 青木克仁ゼミ

皆さん、こんにちは!
私のゼミで目下、3年生のゼミの学生達と行っていることについてお話しします。若く熱意あるゼミ生の皆さんの要望で、3年生前期は「気候危機(Climate Crisis)」の問題を重点的に取り上げることになりました。

「気候危機」という言葉は、未だ耳に馴染まないかもしれません。2019年、イギリス、『ガーディアン』紙が、今まさに環境が危機的であり、非常事態にあるという認識から、気候変動関連の用語を変更しました。例えば、「Climate Change(気候変動)」を使わずに、「Climate Emergency(気候非常事態)」、「Climate Crisis(気候危機)」、さらには「Climate Breakdown(気候崩壊)」といった言葉を積極的に使用していくことを決めたのです。「Global Warming(地球温暖化)」も「Global Heating(地球過熱化)」と言い換えていますので、切迫感が伝わってきますね。

ご存知のように、地球温暖化の問題は、国際的な協力を避けることのできない環境問題です。なぜならば、地球の大気はつながっているからですね。つまり、地球のどこから温室効果ガスを排出しても、その影響は全球的に及んでしまうのです。しかも、二酸化炭素のような温室効果ガスは、大気中に残存する限り、何世代にも渡って影響を与え続けてしまうのです。

カナダのディヴッド・スズキ博士が紹介しているように、アメリカの天文学者、ハーロウ・シャプリーによれば、一回の呼吸で吐く息に30,000,000,000,000,000,000個のアルゴン原子が含まれているというのです。アルゴンは、あなたの呼気から、1年の内に世界の隅々まで広がっていき、1年後に15個位がまた再びあなたの鼻の中に戻ってくるというのです。あなたが追っかけをしている歌手や俳優の吐いたアルゴンをあなたが吸い込んでいるだけではなく、あなたのペットの猫や太古のティラノザウルスの呼気から出たアルゴンを私達が吸いこんでは吐きといったことをしているのかもしれません。

このように想像してみれば、地球上を生きる生き物達が現在も未来もそして歴史的にも、皆繋がっていることが分かることでしょう。すると、大気は、まさに全ての人類の「共有資源(コモンズ)」であることが分かると思います。大気だけではなく、さらには、水、土地、森林、海洋などを含む「地球」自体が「コモンズ」なのです。これが、現行世代の人類だけではなく、未来世代をも含めた人達の、さらにはあらゆる動植物の、生命維持装置としての「コモンズ」になっているわけです。

「ポツダム気候影響研究所」で共同所長を務めるヨハン・ロックストローム博士は、地球が「灼熱地球」に変化してしまう危険があると警鐘を鳴らしています。なぜならば、もし地球の平均気温が1.5℃を超えてしまうと、地球が温暖化の悪循環に陥ってしまい、さらに気温上昇が加速する可能性が出てくるからです。北極の氷の融解が止まらなくなり、温暖化が加速し、それによってシベリア永久凍土も融け、メタンハイドレート中のメタンが放出されてしまうといったように、温暖化を加速させる事態が連鎖し、次々に引き起こされていくのです。特に第二次世界大戦後、気候変化が急激に起きており、生態系が広範に劣化したり、消失したりしているという点で、また大気、土地、水の環境汚染が増加し、その結果、人類の存続に必要な生命維持システムとしての地球環境は、全球的に、不可逆的な劣化を被りつつあるという点で、殆どの科学者が一致しているのです。

それゆえ、これは人類が直面している最大の「公共的問題」と言えるでしょう。地球上で息をし、寒さや暑さをしのぎ、飲み食いしていく以上、全ての人々が必ずや否応なしに巻き込まれていく最大の問題なのです。

皆さんご存知のように、スウェーデンの片隅でグレタ・トゥーンベリさんが声を上げ、それに勇気づけられ、多くの少女達が活動を開始し、さらには全世界の若い人達が立ち上がり、今までは黙していた多くの科学者達、学者達も沈黙を破り活動を開始しています。また、世界中の多くの自治体が「気候緊急事態宣言」を発出し、草の根レベルで起きた小さな運動が大きなうねりとなって全球的に波及しています。

ゼミでは、「今、この時に声を上げること」の公共的な意義についてディスカッションを開始しました。若い皆さんにとって、もはや「他人事」を装っていられない事態となっているこの問題について、目をそむけることなく、どうか少なくとも考え始めて欲しいと心より願います。

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