

医療免疫学分野及び臨床薬学分野、機能形態学分野による研究成果が「Journal of Microbiological Methods」誌に掲載されました
2021.12.22
本学薬学科の医療免疫学分野(森本 金次郎 教授、佐藤 雄一郎 准教授、村上 千穂 助教)と臨床薬学分野(木村 康浩 教授)および機能形態学分野(田中 亜路 講師)の研究成果「Easy detection of siderophore production in diluted growth media using improved CAS regent」が「Journal of Microbiological Methods」誌に掲載されました。(doi: 10.1016/j.mimet.2021.106310)
鉄は微生物の増殖に必須の成分です。そのため、微生物は増殖のためにキレート物質であるシデロフォアを生産して鉄を獲得しています。しかし、環境中の微生物の多くは実験室での培養が難しく、これまでシデロフォアが検出できる条件で培養できていたのは、主にγプロテオバクテリア綱に属する菌でした。今回の研究では、培養方法を工夫することで、これまで注目されてこなかったβプロテオバクテリア網に属する菌からシデロフォアを検出する方法を開発しました。具体的には、一般細菌の培養に用いられる培地を水でうすめた鉄制限培地で菌を培養することで、シデロフォアの検出に広く使用されているスルホン酸クロムアズロール(CAS)アッセイで検出するのに十分なシデロフォアを産生させることに成功しました。この培養方法とCASアッセイを組み合わせた方法は、新たなシデロフォア産生細菌を発見するための有望なツールになり、シデロフォア研究の発展に大いに貢献すると予想されます。
現在、医療現場で使用されている抗菌薬は特定の菌のみを標的とするものは少なく、病原性細菌だけでなく、ヒト体内で有益に働く善玉菌の数も減らしてしまいます。シデロフォアはそれぞれの菌に固有のものであるため、これを標的とする抗菌薬は特定の菌のみの数を減らすことができます。本研究で開発された方法でシデロフォア研究が進めば、病原性細菌を特異的に排除する抗菌薬開発の足がかりになるなど、医療分野に貢献することが期待されます。
参考: Chiho Murakami, Arowu R Tanaka, Yuichiro Sato, Yasuhiro Kimura, Kinjiro Morimoto. J. Microbiol. Methods., 189, 106310, 2021
様々な希釈培地中でのCASアッセイによるシデロフォアの検出