生活デザイン学科では衣食住に関する多くの実習が開講されています。目指しているのは、「幸せな人生」を送るための知識や技術、そして「人柄」を培うこと。「ここでの学びを通して、人としてもっともっと成長してほしい。」そんな先生方の想いが詰まった「もう一つのシラバス」を3編紹介します。
<1.服飾構成実習~私がわかる、私がかわる~>
この実習では、好きな色や柄の布地を選び、自分のサイズにしっかり合わせて裁断や型どりをする、「オーダーメード」のプロセスを体験し、世界で一つだけのオリジナル服に仕上げていきます。
最初にチャレンジするのは浴衣、その次はブラウスにスカート。1年かけて進めます。針を持つのが小学生以来という学生たちには少し荷が重いかもしれません。授業だけでは間に合わず、実習室に遅くまで残って製作に打ち込むことも。
そんな苦労の甲斐あって、どの作品も完成した日にそのまま身につけて帰りたくなるほどの出来栄えだそうです。立派に着られるものを作れた、という思いは大きな自信につながります。またこの経験がきっかけで、お気に入りの服は修繕しながら着るという習慣を身につけた学生も多いそうです。裁縫技術の習得に加え、生き方にも良い刺激が与えられるのがこの実習の特徴です。
でもそれだけではありません。自分の服を作る上で最も大切なのは、身体との「対話」。快適な着こなしを求めて手足の長さやボディの形、さらには歩幅や関節の動きまでチェックしていきます。特に要注意なのが襟足。一番敏感な部分だけに寸法を念入りに測定します。こうして隅々まで把握できれば、これまで以上に自分のことがわかります。ひょっとしたらもっと好きになれるかも。服作りとは「自分探し」の機会でもあるようです。
それまでと一味違った私になれる。そんな「変身の魔法」をかけてもらえるのが「服飾構成実習」の本当の魅力なのではないでしょうか。
<2.調理学実習~誰かのために、誰かとともに~>
この授業のテーマは「旬の素材で簡単手料理」。手際よく、おいしい食事を作ります。献立は和洋中まで多種多様。流行りのメニューもちゃんと取り入れているそうです。特に力を入れているのは「昔ながらの日本の食事」。食べ慣れていない食材も、工夫次第ですごく美味しくなることを知ってもらうためです。
幸いなことに、この学科の学生はセンスが本当に抜群。色彩から造形まで幅広く学んでいるからでしょう。それが盛りつけやテーブルコーディネートに存分に生かされているのだとか。このように、味も見た目もまるでレストランのように楽しめる「技」を1年かけて磨きます。
こんな実習の最後の課題が「手軽に作れるお弁当」。見栄えが良くて栄養バランスもとれているのに短時間でできあがり、というレシピを一人一人が考案します。作品だけを見てみれば、もうちょっとした「三つ星シェフ」。そんな錯覚を起こしてしまうくらい見事なものが並ぶそうです。
もちろん作るだけではありません。買い出しに始まり、片付けで終わるのが手料理。その全てを体験することになるわけですが、みなその手間を惜しまず、班ごとに協力し合って、仲良く、楽しく、気持ちよく実習に取り組んでいます。
「食」は何より大切な生活の基礎。だから毎日続けなければなりません。そのために必要なのは手早くおいしいものが作れる技術と知識、そして「誰かのために、誰かとともに」という想い。この授業で学んだ学生たちなら、家族にとって最高の「贈り物」ができる人にきっとなれると思います。
<3.設計製図~想いを形にするために~>
平成24年度入学生より、一級建築士試験の受験資格が得られることになりました。関係する科目も増えて、建築業界に進みたい学生にはますます充実したカリキュラムになりました。そんな「住」分野の中で一番重要なのがこの授業と言えるかもしれません。
設計図の描き方をとにかく徹底して学びます。まずは専門記号の習得。次に専用の定規を使って線を引く練習。さらに専門家が書いた図面を丁寧に模写。ここまででも半年を要します。これらの過程を全部クリアして、初めて本格的な設計製図に取り組みます。
最初の設計課題は住宅。住んでみたいと誰もが思う憧れの家を図にします。漠然としたイメージに明確な形を与え、最後は模型で現実化。やっていることはプロと全く変わりません。当然ながら、学生たちには過酷な作業。製図室を夜遅くまで照らす灯りは、今やこの学科の名物になりました。
カフェやギャラリー、そして公園や川べりなどの公共施設へも次々チャレンジします。自分の考えを実現するためならどんな努力も惜しまない。そんな人に必ずなれると思います。この実習で、「想いを形にする」ことの面白さを心の底から味わったわけですから。