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デンマーク研修報告記

2017.05.23

  • 学科コラム

デンマークから学んだ「幸せな生活」とは?

生活デザイン学科 3年1組 佐々木絵梨


私は、昨年度(2016年後期)に、安田女子大学家政学部生活デザイン学科を主催とした、大学連携による新たな教育プログラム「家政学とグローバル人材養成プログラム~日本とデンマークの幸せの知恵~」という講座を受講した。そして2017年3月に、デンマークでの現地研修に参加した。この研修記では、本プログラムの趣旨と参加した目的、現地での研修報告と感じたこと、そして世界一幸せな国と言われるデンマークから学んだ「幸せな生活」について、という三点を述べていく。

  • seide20170523_01.jpgデンマークの街並みと人々


1.「家政学とグローバル人材養成プログラム」とは

まず、本プログラムについて紹介する。本プログラムは、世界一幸せな国と言われているデンマークについて、「HYGGE(ヒュッゲ)」を中心とした幸せの知恵を学ぶことを目的にしているが、単にデンマークの幸せの知恵を取り入れることだけが目的ではない。本プログラムは、デンマークについて学ぶとともに、日本の生活に目を向け、日本の幸せの知恵について考え、発信していくことも大きな目的である。その為、全11回の講義では、デンマークと日本、それぞれの知恵について学んできた。まず、デンマークについて学んだことを紹介する。デンマークについての講義では、在日デンマーク王国大使館のフレディ・スヴェイネ大使とリーゼ・フレデリクセン・スヴェイネ大使夫人からデンマークの教育を中心に教えて頂き、また、アンデルセンの前代表取締役社長である吉田正子様から、デンマークの教育に加え、地理や歴史、政治、経済、ライフスタイルについて幅広く教えて頂いた。その中でも、私が特に印象に残っていることが、デンマークの教育の在り方とHYGGEという二点である。デンマークは福祉が充実した国であり、医療費や学費が無料である、ということはよく知られているが、私は、デンマークの教育方針に特に魅力を感じた。デンマークでは、家庭でも学校でも、「自分で考え、判断し、問題解決をする」能力を身につけるように、自立教育が進められている。その為、他人と成績を比較することは絶対にないという。また、吉田様から、「デンマークでまず言われていることは、自分の好きなことを見つけるということ。そしてそれを得意なことにし、他者の為に活かすことが出来るようにすること。デンマークではそれが出来れば十分とされている。」というお話をお聞きし、自分と向き合うことの大切さを、教育を通して伝えている国なのだと感銘を受けた。そして、デンマークが世界一幸せと言われる国である理由が「HYGGE」という言葉にある。HYGGEとは、デンマーク語で「人と人とのふれあいから生まれる、心温まる居心地の良い雰囲気」を指す言葉である。私たち日本人には考えにくいかもしれないが、デンマーク人はろうそくの灯だけをともして家族で団らんすることがあるという。大切な人と食事をしたり、話したりするという、当たり前のようなことを当たり前と思わず、大きな幸せとして大切にしているという点に、デンマーク人の心の豊かさや、世界一幸せな国と言われる所以を感じた。

更に、デンマークについての学びでは、上記のような講義だけではなく実習も行われた。アンデルセンのシェフの方々にお越し頂き、デンマークの食として知られているデニッシュペストリーとオープンサンドイッチを作る実習を行うとともに、デンマーク人の食生活についても学ぶことが出来、非常に有意義な実習であった。写真は当日実際に作ったデニッシュペストリーとオープンサンドイッチである。

  • seide20170523_02.jpg画デニッシュペストリーとオープンサンドイッチ


次に、日本について学んだことを紹介する。日本には世界に誇れる伝統的な文化が沢山あり、その中でも本プログラムでは、刺し子と漆について学んだ。私自身、この二つの日本文化について、名称と外見こそは知っていたが、具体的なことは知らなかった。その為、講義で学んだり、実際に触れてみたりして、日本文化の良さを改めて感じたとともに、日本人の生活の知恵に驚かされた。例えば刺し子は、元々は装飾の目的ではなく、寒冷な東北地方の冬をしのぐ為、そして農作業で衣服が擦り切れないようにする為に作り出されたものであり、農民の知恵の結晶といえる。また、漆は、日本の汁物文化に欠かせないものであるが、単に色と質感が美しいだけではない。食器は使用し続けると、少しずつ塗装が剥げて身体に入ってくるが、漆は身体に入っても害がないのである。このように、日本文化は、伝統や美しさだけでなく、身体への優しさや機能性をも持ち合わせているということを学ぶことが出来た。更に、日本についての講義では、(株)コーポレーションパールスターの新宅光男様にお越し頂き、知恵と工夫により、「保温」という日本本来のライフスタイルに合った製品の研究開発をされていることについて、お話を伺った。このように、デンマークと日本という、二つの国の知恵について学び、全11回の講義は非常に充実したものであった。そして11回の講義の出席や意欲、「デンマークから学んだこと」と「日本からデンマークへの提案」という二つのレポートにより、デンマーク現地研修の参加者が選ばれた。

私が本プログラムを受講したのは、自分自身の生活を見直したいと思うとともに、大学での4年間の間に海外研修へ行き、視野を広げたいと考えていた為である。その為、受講当初から、研修参加者に選ばれたいと強く思っていた。受講していた人の多くがそう思っていたのか、講義を真剣に聞く意欲の高い学生が多く、私も良い刺激を受けながら受講することが出来た。そしてデンマークでの現地研修に選んで頂いたことで、「世界一幸せと言われる国から、これからの生活を幸せにするヒントを精一杯学んでこよう!」という強い気持ちを抱き、研修へと向かった。


2.研修報告

私たちは、2017年3月24日~31日の期間でデンマークへの現地研修に参加した。初日の3月24日は、広島空港を出発し羽田空港へ行き、羽田空港から成田空港へと向かい、周辺のホテルで一泊した。そして翌日の25日に、スカンジナビア航空で成田空港からコペンハーゲンへと向かった。その為、25日~31日の期間で研修報告を記す。

●デンマーク1日目(3月25日)

私たちは日本時間の12時30分頃に、スカンジナビア航空で成田空港からコペンハーゲンへと向かった。コペンハーゲンまでの飛行時間は12時間弱で、日本とコペンハーゲンの時差は-8時間あることから、現地時間の午後4時頃にコペンハーゲンに到着した。到着後、宿泊先のリッチモンドホテルへ向かい、ホテル到着後は各客室へと分かれた。私は街歩きも兼ねて、同室の友人と一緒に夕食を買いに行った。というのも、今回の研修では、朝食はホテルのバイキングであったが、昼食と夕食に関しては各自で購入することになっていた為である。私たちはまず、ホテルの近くにあるスーパーマーケット「NETTO(ネトゥー)」へ行き、その後日本でもお馴染みのコンビニエンスストア、セブンイレブンへ行った。NETTOは品揃えの豊富なスーパーマーケットで、デンマーク国旗のガーランドが飾ってある等、カラフルで見るだけでも楽しませてくれる内装になっていた。一方、セブンイレブンは、日本とは大きく異なっていた為非常に驚いた。日本のセブンイレブンは、例えばサラダ一つとっても種類が豊富であるのに対し、デンマークのセブンイレブンは、パンこそは種類が多かったが、サラダやパスタ等は種類も個数もごく僅かであった。また、濃い茶色をベースにした、落ち着きとお洒落さのある内装であった。このように、初日にして日本との違いやデンマークのデザインに触れることが出来、翌日以降の研修へ向けて、より期待が膨らんだ一日であった。

  • seide20170523_03.jpgNETTOの内装 国旗のガーランドが可愛らしい


●デンマーク2日目(3月26日)

前日までは、日本との時差が-8時間であったが、この日からサマータイムが始まり、時差が-7時間になった。そしてこの日から、研修が本格的に始まった。私たちはまず、繁華街であるストロイエ通りを中心に街歩きをし、そして観光バスに乗りデンマークの名所を巡った。観光バスでは、日本語の音声ガイドでデンマークの名所についての解説や歴史を聞くことが出来るようになっていた為、単に名所を巡るだけでなく、デンマークについて様々なことを学ぶことが出来た。沢山の名所を巡った中で、最も印象に残ったのは、やはり「人魚姫の像」である。デンマークは「アンデルセン童話」でお馴染みの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンを生んだ国であり、中でも彼の代表作である「人魚姫」がブロンズ像になっている。コペンハーゲンのシンボルともいえる場所である為、多くの人が訪れていたが、間近で見ることが出来た。そして感動とともに、憧れの地であるデンマークに本当に来たのだと実感した。また、アマリエンボー宮殿で衛兵交代式を見たり、美しい海とそれに臨むオペラハウスを眺めたりすることも出来た。

  • seide20170523_04.jpgコペンハーゲンのシンボル、人魚姫の像


午後からはボートに乗り、観光名所を見て廻る運河ツアーを楽しんだ。観光バスでも訪れた様々な名所を海側から見ることが出来、また違った感動があったとともに、コペンハーゲンは水の都として発展した都市なのだと気づいた。中でも印象に残ったのが、運河沿いにある、カラフルで可愛らしい建築物が並ぶ「ニューハウン」である。此方も人魚姫の像と同様、デンマークのシンボルといえる場所であり、アンデルセンが愛した港町でもある。ニューハウンを見て、抜群の色彩感覚とデザインセンスに惹き込まれ、私にとってデンマークで最も忘れられない場所になった。また、運河ツアーをしていた時、運河沿いには多くの人が、座ってのんびりと話をして過ごしているのを見かけ、まさにHYGGEな光景であると感じ、幸せな気持ちになった。そして運河ツアーの後に、ニュー・カールスベア美術館へ行き、古代の彫刻やフランス絵画を中心に鑑賞した。日本の美術館に比べ、作品の所蔵数が圧倒的に多いだけではなく、作品を展示されている空間そのものや美術館の入口も引き込まれるようなデザインで溢れていた。研修2日目は美しいものを沢山見ることが出来、感動と発見の多い一日となった。

  • seide20170523_05.jpg可愛らしい建築物が並ぶニューハウン


●デンマーク3日目(3月27日)

この日は、アンデルセン・デンマーク本店とロイヤルコペンハーゲン本社を訪問し、デンマーク人の幸せな理由を探った。まず、アンデルセン・デンマーク本店を訪問し、ディレクターの豊島崇宜様から、デンマークでの企業展開やデンマーク人の食生活に関するお話を伺った。その中で特に印象に残ったことが二つあり、一つ目は、デンマークではワークライフバランスが整っていることである。日本では、体調が悪い時でも休みを取りにくい環境の場合があるが、デンマークでは「無理して出勤する必要はない」という考えから、体調が悪い時には休める環境があり、そして欠勤した分の給与も支払われるという。また、残業代は給与の3~5割増しにもなることから、残業は殆どないそうである。日本での講義の中でも、デンマークのワークライフバランスについては学んでいたが、現地で実際にそういったお話を伺うことが出来、本当に働きやすい国なのだと感じた。そして二つ目は、デンマーク人はどんなに忙しくても、食や身体を大切にしているということである。デンマーク人は、朝、昼食のお弁当を作るのに十分な時間がない時でも、バター付きのライ麦パンにチーズ、生の人参やキュウリといった、最低限必要な栄養が摂れるお弁当にするのだという。逆に、昼食に菓子パンだけを食べていると、「栄養バランスが悪いと仕事のパフォーマンスが下がる」という考えから、心配されるのだという。このように、デンマークでは、ワークライフバランスが国全体で整っていることに加えて、個人個人が仕事や生活においての意識が高いことが分かった。

  • seide20170523_06.jpgアンデルセンのデニッシュペストリー


その後私たちは、ストロイエ通りにあるロイヤルコペンハーゲン本社を訪問した。ロイヤルコペンハーゲンは、世界でも非常に有名な陶磁器メーカーであり、その陶磁器は1775年の創業時から、職人によって一つ一つ手描きして作られている。手描きの為、模様の大きさや色の濃さが一つ一つ異なっていることから、手作りならではの醍醐味や、お気に入りの一点を見つける楽しみがあると感じた。私たちは、2階にある「ロイヤル・コペンハーゲン・コレクション」というミュージアムを視察し、様々な陶磁器を鑑賞し買い物を楽しんだ。中には日本円で300万円ほどの食器もあったが、手描きによるデザインが繊細で非常に美しいものであった為、「高い」とはあまり思わなかった。寧ろ、手作りには言葉に表すことの出来ない大きな価値がある為、相応の価格だと感じた。このように、研修3日目は、デンマーク人の幸せな理由に迫ることが出来たが、まだ他にもあるのではないかと思いながら一日を終えた。

  • seide20170523_07.jpgロイヤルコペンハーゲンの陶器


●デンマーク4日目(3月28日)

この日は、今回の研修のメインである、デンマーク工科大学(DTU)訪問の日であった。午前中は学内を散策し、大学の学食で昼食をとった。大学の設備は日本とは大きく異なっており、図書館には大きなテレビやソファが、自習室にはビリヤード台があった。勉強できる環境も整っていながら、勉強に疲れた時に息抜きが出来るようになっているところに、自由な時間を大切にするデンマークらしさを感じた。そして午後からは、Olesen教授による、持続可能な室内環境についての講義を受けた。この講義は、DTUの大学院の学生に向けての講義であった為、少し難しかったが、教授は、バンコクの空港やオペラハウス、日本の小学館の本社ビルを例に挙げ、持続可能な室内環境について説明して下さった。そしてその後は、ICIEEという、DTUにある快適な室内環境に関する国際研究所の研究施設を見学した。最先端の研究施設が揃う中で、最も興味深かったのは、飛行機の機内環境の快適性を研究する施設である。飛行機の機内を再現した部屋の中で、ウイルスがどの程度広まり影響を及ぼすのか、といった研究を行っており、この研究を始めたのはICIEEが初めてなのだという。私は建築や室内環境について学んでいる訳ではないが、こういった研究施設の訪問は、生活デザイン学科に在籍している私にとって貴重な経験になった。

そして、今回の研修の一番のメインである、DTUの建築専攻の学生との懇親会が行われた。DTUの学生たちは私たちを温かく迎え、積極的に話しかけてくれた為、非常に嬉しい気持ちになった。私は3人のDTUの学生と会話を楽しんだ。3人の学生たちは英語でゆっくりと話してくれた為、理解しやすく、私も英語で積極的に返すことが出来た。しかし、それでもやはり、「こう言いたいけれど、何と言えば良いのか...」というもどかしさも感じた為、より英語を勉強する必要性を感じた。

また、懇親会の際に、広島市立大学の大塚先生により漆のデモンストレーションが行われ、日本の知恵の一つをデンマークに伝えることが出来た。今回、私たちからのプレゼンテーションは時間の関係上叶わなかったが、今年度以降の研修で、学生が日本の幸せの知恵をデンマークの学生に伝える機会があると、学生同士の交流がより充実したものになるかもしれないと感じた。

  • seide20170523_08.jpgDTUの学生たちと一緒に


●デンマーク5日目(3月29日)

この日はまず、午前中にシステアナ美術館へ行き、折り鶴タワーの設計者である三分一博志氏の個展を鑑賞した。「THE WATER」という個展の名の通り、地下の空間は水で満たされており、まるで潮が満ちた時の厳島神社の境内のように感じた。木材の豊かな香りが広がり、僅かな光が差している空間は、幻想的なインスタレーションであったとともに、デンマークにいながら日本の雰囲気も感じることが出来るものであった。

そして午後からは、コペンハーゲン市庁舎を見学した。市庁舎の中も美しいデザインで溢れており、心から幸せな気持ちになった。また、市庁舎には、高さが100メートル以上の、コペンハーゲンで最も高い塔があり、私たちは階段で塔を登り、街を一望した。塔から見たコペンハーゲンは、温かく落ち着いた色の美しい街並みであった。そして、海とその先にあるスウェーデンも微かに見ることが出来た。

  • seide20170523_09.jpgコペンハーゲン市庁舎



  • seide20170523_10.jpgコペンハーゲン市庁舎からの眺め


この日はその後、自由時間が十分にあった為、私は後輩と一緒に買い物を楽しんだ。ストロイエ通りに、可愛らしいお店やお土産を買うのに最適なお店が沢山あったが、私たちは路地裏にも可愛らしい雑貨屋が沢山あるのを発見した。デンマークの雑貨はどれも可愛らしさと温かさのある、凝ったデザインのものが多く、眺めるのも選ぶのも本当に楽しく充実したひと時だった。

●デンマーク6日目(3月30日)・帰国(3月31日)

デンマークでの研修最終日は、午前中は自由時間になっていた。その為、私は友人たちと一緒に再びストロイエ通りに行き、買い物を楽しんだ。その後、正午頃に空港へ向かい、スカンジナビア航空で成田空港へと戻った。帰りの飛行時は、行きよりも天候が悪かったが、順調に飛行し、帰りは10時間半ほどで成田空港へ到着した。そして成田空港から羽田空港へ行き、そこから広島空港へ戻った。当時広島空港は雪が降っていた為、着陸不可能であれば大阪の伊丹空港へ向かう、とのアナウンスが流れたが、なんとか着陸出来、私たちの研修が無事終了した。


3.デンマークから学んだ「幸せな生活」

最後に、実際にデンマークを訪れて分かった「幸せな生活」について、私なりの考えを述べていく。私は、今回の研修で、幸せな生活を送る上で大切なことを三点感じた。これから、その三点について紹介する。

一つ目は、衣食住だけではなく、健康や環境にも配慮した、丁寧な生活を送ることである。アンデルセン・デンマーク本店でのお話でもあったように、デンマーク人はどんなに忙しくても食生活や健康に大変気を遣っている。そして、デンマークは環境に優しいライフスタイルが定着している国である。私は研修中、毎日のようにセブンイレブンやスーパーマーケットを利用していたが、袋に入れて貰えたのはスーパーマーケットで大きなものを購入した時の一回のみであった。日本でも、スーパーマーケットではそういったことはあるが、コンビニエンスストアでは袋に入れて貰うのが当たり前だと思っていた為、最初は非常に驚いた。しかし、慣れていくうちに、あまり必要ではないと思うようになり、日本に戻った今でも袋を断ることが多くなった。また、デンマークは環境への配慮から、自転車で移動する人が非常に多い。自転車用道路や駐輪場も十分確保されており、電車等の交通機関に自転車を持ち込むことも可能であるという。このように、衣食住は勿論、自らの健康や将来の環境のことも考えて生活していくことが、豊かで幸せな生活を送る上で基盤になると感じた。そしてこの「衣・食・住・健康・環境」という五つの柱は、まさに生活デザイン学科の方針なのである。

二つ目は、美しいものや素敵なものに触れる機会を沢山持つことである。研修で訪れた美術館やコペンハーゲン市庁舎は勿論のこと、デンマークの街は歴史ある、色彩豊かな建築物で溢れていた。また、ロイヤルコペンハーゲンの、美しいだけでなく優しさや温かさも兼ね備えた陶磁器は、眺めているだけで幸せな気持ちにさせてくれたとともに、絵画やデザインのヒントにもなった。このように、デンマークには優れたデザインのものが溢れており、そういったものを日常的に見たり使ったりすることが、デンマークが世界一幸せな国と言われる理由の一つだと感じた。美しいものや素敵なものに触れることは、心が洗われるとともに感性も磨かれる。そしてそういった経験を積むことで、これからの幸せな生活へのヒントを沢山得ることが出来るのだと気づいた。

三つ目は、人と接することを楽しむことである。先に述べたように、デンマーク人はHYGGEを大切にしているが、実際に現地を訪れて、HYGGEな光景や姿勢に沢山出会った。研修の間、多くの人が友人や家族と一緒に、散歩やサイクリング、日向ぼっこをして楽しんでいる姿を見かけた。また、DTUで学生との交流をした時、DTUの学生たちの方から話しかけてくれただけでなく、沢山話したいという姿勢が感じられ、本当に嬉しい気持ちになった。このように、人とのふれあいが大好きなデンマーク人と実際に接したことで、人と接することの大切さや温かさを改めて感じることが出来た。私自身、人見知りで話すことは少し苦手だが、これからは自分の考えをしっかりと持ち、少しずつでも、多くの人とコミュニケーションをとっていきたいと思っている。そして、家族や友人と過ごす時間を当たり前と思わず、感謝の気持ちを持ち、私に出来る最大限のことをすることで、HYGGEの素晴らしさを日本にも広めていきたいと考えている。

最後に、本プログラムで分かりやすく幸せの知恵を教えて下さった先生方、研修で沢山の幸せを共にし、良い刺激を与えてくれた仲間、そして研修費用の一部を補助して頂いた広島県に心から感謝している。そして、この研修記を通じて、今年度以降より多くの方が本プログラムを受講し、幸せの知恵について考えてくれることを望んでいる。