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【授業紹介】英米小説講読Ⅰ(3・4年生)

2023.07.03

  • 学びの特徴

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授業担当者:田多良俊樹

この授業では、イギリスやアイルランドの現代作家の短編小説を原文で読んでいきます。2023年度前期の前半は、ノーベル賞作家 Kazuo Ishiguro の "A Family Supper" を読みました。

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この授業の目的は、2つあります。ひとつは、文学作品の英語を文法的に正しく理解すること。もうひとつは、小説技法や英語圏文化に関する知識を駆使して、作品に残る「謎」を解くことです。

まず、英文法の知識をチェックするために、一文一文をゆっくりと細かく読んでいきます。たとえば、以下の英文(1)~(3)における that がどのような働きをしているか、学生たちは説明を求められます。

(1) She seemed inhibited by the fear that her questions might lead to awkward topics.
(2) We stared at the stark walls and tatami in the pale light that came from the windows.
(3) I hadn't meant to tell you this, but perhaps it's best that I do.

これらの that はすべて、高等学校卒業までに文法事項として習うものです。文学作品を読むと、高校では単元ごとに別々に学んでいた文法的知識をまとめて復習することができます。学生たちは、このチェックを繰り返していくことで、英文法の理解と定着を確かなものにしていきます。

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(学生の書き込みが、英文法チェックの効果を物語っています)

文法的に正しく理解すると、当然のことながら、物語の内容も正確に把握できます。しかし、そのように読んでもなお、文学作品には「謎」が残ることがあります。 "A Family Supper" の場合は、主人公「わたし」の父親が夕食に作ってくれた鍋の具材です。鍋がとてもおいしかったので、「わたし」は父親に、鍋の具材は何かと2回たずねます。しかし父親は2回とも「魚だ」としか答えず、具体的には何の魚なのかを明らかにしません。

この「謎」について、学生たちにディスカッションをしてもらいました。学生たちは、物語の内容に基づき、「この魚はおそらくフグだろう」と考えました。しかし、ここで新たに、「なぜ父親はフグであることを隠すのか」という新たな謎が浮かび上がります。

この点を解釈するヒントとして、授業担当者は、「信頼できない語り手」という小説技法、回想形式の時間の二重性、および作者イシグロの「超常現象」に関する発言について講義しました。この「謎」の答えをここで明らかにすることはできませんが、学生にとっては、文学作品の「謎を解く」=文学作品を解釈する良い機会になったと思います。

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文学作品を原文で読むことは、英文法の理解度を確かめる試金石となると同時に、英語圏の文化に関する知識を深める絶好の機会です。みなさんも、安田女子大学の英語英米文学科で、英語力と異文化理解を兼ね備えた人材になりましょう!