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令和4年度英語英米文学会講演会が開催されました

2022.12.02

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11月24日(木)、令和4年度の英語英米文学会主催の講演会が開催されました。70作を超える著訳書を出版されている翻訳家/ライターの実川元子先生を講師にお迎えし、「翻訳で開ける世界」という題目でご講演いただきました。翻訳業を志した経緯、翻訳業という業種、翻訳者に求められる資質、そして、翻訳業の未来についてと多岐にわたって、興味深いお話をしていただきました。

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児童文学から始まった海外文化への憧れ、大学でのフランス語専攻と留学、会社勤めでの翻訳業、そして翻訳者として一本立ちした経緯、と先生の人生は時代を反映した冒険物語のようでもありました。先生ご自身が紡がれてきた物語が聞き手にとってわくわくするものになるのは、そこに翻訳に対する先生の真摯な姿勢が一貫して存在しているからなのでしょう。

「言葉の引き出し」を多く持ち、知っている言葉を「知っている」と満足するのではなく、どこまでも突き詰めていく、読解力と表現力を足すのではなく「かける」ことで翻訳力は二乗になる、といった先生の翻訳についてのお考えは、英語の学習について学生達に再考を促す良い機会となりました。

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翻訳は世界を多角的に見る視点を与え、翻訳者の役割は多様化、複雑化した世界を立体的に伝えること、という先生の思いは、解決できない様々な問題を抱える今の世界を生きるしかない私達に強く響くものでした。

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以下、学生達のコメントをいくつか紹介します。


先生は何かある度に何かを学ばれていて、人生はずっと学びなのだとあらためて感じました。私もこれからどんなことからも少しずつでも学んでいこうと思いました。
 
"I love you"だけで何通りも訳すことができるのは面白かったです。どの訳が当てはまるのか、aと the はどちらが入るのか、と考えるのは、とても難しそうだと感じましたが、それだけ意味を知っていれば楽しいだろうとも思いました。翻訳家の仕事に興味が持てました。(1年生)
 
私は本を読むのが好きで海外の本も読みますが、翻訳に注目して読んだことがなかったので、もっと翻訳者や内容に注目しながら読んでいきたいと思います。一つの言葉を訳すにしても場面や心情によって様々な訳になると聞いて、確かにGoogle翻訳も便利だけれど、直訳ではなく、その人の言葉に込められた思いをくみ取り伝えることができるのは人間しかないと感じました。(1年生)
 
今まで"I love you"と聞くと「あなたを愛しています」としか頭に浮かびませんでしたが、ペットを可愛がる時や大切な人と別れる時など、様々な場面で使われることを知り、翻訳の奥深さと難しさをあらためて実感しました。言葉の後ろにある声を聴きとれるように、英語の勉強を頑張ろうと思います。(1年生)
 
翻訳するには英語の実力も大切だけれど、それ以外にも専門的な知識やコミュニケーション能力などのスキルも重要だと分かりました。「小心者」というと、あまり良いイメージは持たれないのではないかと思っていましたが、翻訳では細かい部分まで気が付くことができる必要な素質だと聞いて、プラスに捉えることができるのが印象的でした。翻訳を通して異文化交流ができるのは本当に素敵なことだと思うので、私も自分の知らない世界で起こっている出来事を理解できるように、これからも英語を学んでいきたいと思いました。(3年生)
 
実川先生の経歴だけでなく、翻訳家となるまでの経緯や過去の経験についてもお話していただけて、とても興味深かったです。出版翻訳の仕事だけで食べていける人は日本にはおそらく5人位しかないだろうと聞いて驚きました。翻訳の仕事にも、実務、映像、出版という分野があり、それぞれの仕事内容を知ることができて良かったです。ワイタンギ条約を今回初めて知りましたが、機械翻訳ではなく人が翻訳する重要性を学ぶことができました。(3年生)
 
一つの文章でもその状況によって様々な解釈があり、それを正しく捉えるためには想像力や追求力が必須だと感じました。先生がおっしゃっていたように、これは機械ではなく人の力でないと無理です。だんだん機械の力が期待されていますが、それに負けることなく、この先も仕事として残り続けるべきだと思います。翻訳というお仕事は単に訳すのではなく、その裏にある声を聴くというお言葉がとても印象に残りました。(4年生)
 
お話の中で一番印象に残ったことは「言葉の引き出しの多さ」が重要ということです。私は最近卒論を執筆する中で、頭の中で考えている日本語を英語に直すことが難しく、自分の語彙のなさを感じていました。やはり外国語を取り扱うには言葉の引き出しを多くしておく必要があると思いました。子どもの頃に読んだ本に影響を受け、翻訳を仕事にされる行動力は素晴らしいと思います。(4年生)
 
色々なことに興味を持って挑戦されていることが恰好いいなあと思いました。私は本を読むことが苦手なのに、卒論では海外の児童文学の翻訳について書きました。やっていく中で自分なりの言葉で訳すことの楽しさを、少しは感じることができました。これから社会人になっても、やってみようという気持ちをもって、色々なことに挑戦していきたいと思います。(4年生)
 
翻訳家になるまでの経緯を聞かせていただき、幼い頃の家庭環境や文学に対する興味が凄いなあと思いました。翻訳に携わりながら、「言葉のリズム」の大切さや文化など普通の翻訳では伝わりきれないものを見つけ、それらを言葉にするのは、とても大変だけれども、やりがいを感じられる素敵なお仕事だということがよく伝わりました。自信と誇りをもって翻訳家のお仕事をされていることを尊敬します。(4年生)