

平成29年度英語英米文学会講演会が開催されました
2017.07.21
7月13日(木)、英語英米文学会主催の講演会が、翻訳『ゲド戦記』、『夜が明けるまで』、また、『子どもの本のまなざし』等、数多くの翻訳書・著書を出版されている、翻訳家・児童文学者の清水真砂子先生を講師にお迎えして、「翻訳というこわーい仕事。でも・・・」というテーマで開催されました。
清水先生からは、日本語の力が楽器となり、翻訳という演奏がはじめて可能になること、一つ一つの作品の翻訳にあたって、歴史的、文化的背景にいたるまで丁寧に勉強をすること等、多彩なエピソードを交えて、翻訳に臨まれる先生の真摯な姿勢を教えていただきました。翻訳する作品には、作者の声、そして、その物語に込められている他者の声を聴きとっていくというお話には、皆、翻訳の大変さと同時に魅力を認識させられたことでしょう。また、「本はよめなければならない」、なぜなら、本には、私達が問いかけていることへの応答がすでに幾度となく書かれているのだからと話される先生のお言葉は、若い学生達にとって、貴重なアドバイスとなりました。
英文科の学生達の中には、翻訳を将来の仕事として考えている者もいます。そうした学生の一人が、講演後、先生に質問をしていました。先生の応答の中に、「自分自身が今している仕事を投げうってでも翻訳しないではいられない。誰かひとりでいいから自分にとって大切な他者とこの本から得られる喜びを共有しないではいられない。そう思える本に出会うことが第一番です」という言葉がありました。彼女は、この言葉を糧にして、これからも翻訳家を目指して頑張っていくことと思います。
自分もまた自らの内にある強い願いをきちんと言語化し、それを大切にして生きていきたいーそう思わされたこの講演会は、学生達のみならず教職員にとっても、本当に貴重な学びの時間となりました。
*学生達の感想から一部紹介いたします。
・「先生は自分に何が足りないのかを自己分析して、足りない部分を自力で手に入れ身に付けていかれたのが、本当に尊敬できることと感じた。」
・「自分たちが今悩んでいることは、千年前、2千年前の人々も悩んでいて、きちんと文学にしてくれていて、人生を追い詰められた時に救ってくれるものが文学かもしれないという言葉に、非常に納得しました。」
・「『真実、事実と何か、これを真剣に見つめてしっかりと受け止める』というお話が感動的でした。何が真実なのか、相手のことをしっかりと考えて、どれだけエネルギーを捧げられるか、私たちが人と関わっていく上でとても大切だと思いました。」
・「若いうちに怖がらないで、たくさんのことに挑戦し、たくさん失敗し、その失敗から多くのことを学んでいく生き方はとても恰好いいと思います。」
・「日本語を鍛えることと英語を学ぶことは切り離せるものではないということを痛感しました。英語を学んでいる真っ最中ですが、日本語も本も読むことが大好きなので、いつか豊かな日本語と英語が使える人になりたいと思いました。」
・「清水先生の翻訳はとてもきれいだけれど、それ以前に先生の生き方が美しいです。」
・「今日の講演を聴いて、外国の地で今までの生活において経験したことのない出来事一つひとつを大切に受け入れていくことを意識して、素敵な留学にしたいと思いました。」
・「清水先生のお話を聴いて気づいたことは、先生が大変なことや厳しいことも見方や考え方をもう一つ持って楽しいと思われているということです。また、話し方や言葉遣いがとても綺麗で、楽しそうだったので、先生の過去のお話や翻訳のお話を聴いているのに、小さい頃に絵本を読んでもらった時のようにわくわくした気持ちになりました。」
・「本を読んで、知識をつけ、世界の端まで行けるような通訳家になろうと思います。挑戦してみなければ道は開けないですし、可能性は無限大なのにもったいないです。先生のお話を聴いて、希望とパワーがみなぎりました。」
・「印象に残ったことは、"戦争を生き延びて、戦後が生き延びられない"という言葉です。南アメリカ先住民の話を聴き、歴史は本当に正しいのか、自分の力で探ってみることは面白いなと思いました。」
・「清水先生のように文学について情熱的に語り、自分の仕事に自信を持てる大人になりたいと思った。」
・「翻訳はまるで演劇のようだ。何を言わせるのが一番合っているのか、俳優のセリフを考えるかのようと言われた際、深いなあと思いました。清水先生のお話一つひとつがとても勉強になることばかりで、満たされました。」
・「文化の違いを尊重していて、自分の国を過大評価するのは違うと言われていたのを聞いて、これから留学する自分には、とても心に響きました。」
講演会の会場の外です。雲一つない青空の広がる夏の日でした。