

防空識別圏 町博光
2016.12.14
南シナ海の問題ではない。研究室の中でのことである。学生がノックをする。どうぞと答えると、スーッと机の50cm近くまで来ている。あわてて「ちょっと待って」と言いながら、作業を中断して立ち上がる。――昔の学生時代を振り返ると、指導教員の研究室では、恐れ入って入室してもドアを開けたところで直立して待っていたような気がする。最近の学生気質なのだろうか。先生との垣根が消失した結果なのだろうか。研究室での防空識別圏をいったいどの辺りに引いておけばいいのだろうか。
(安田女子大学日本文学会『会報』25号掲載のものを改稿)