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教員紹介<第2回> 山内 廣隆 教授 自著『昭和天皇をポツダム宣言受諾に導いた哲学者 西晋一郎、昭和十八年の御進講とその周辺』(ナカニシヤ出版)を語る

2018.01.24

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山内 廣隆 教授 (西洋近現代哲学、政治哲学、日本の哲学、環境倫理学)

教員紹介<第2回>


「西晋一郎」と言っても、知っている人はほとんどいません。西晋一郎は広島大学の前身である広島文理科大学の教授で、その至宝と言われていました。なぜなら、戦前に西晋一郎は京都帝国大学の西田幾多郎と並び称されるほどの大哲学者だったからです。それなのにどうして西のことを誰も知らないのでしょう。

その理由は、西が国家主義者(国があって初めて人は人間らしく生きることができ、個人より国家が大事だと考える人)で、戦前の日本の皇国教育(神の子孫である天皇を中心にして日本のすべてのものが成り立っているという考えに基づいておこなわれる教育)を先頭に立って推し進めていたからです。つまり、西は戦争の責任者と考えられていたからです。

こうした理由から、西は戦後「語られてはならない人」として忘れ去られました。しかし、私はこの本で、実は日本に平和をもたらしたのは西晋一郎の可能性があるということを示しました。西は昭和十八年一月に昭和天皇に御進講します。西はそこで天皇に『論語』を使って、戦争に負けた時の心構えを説きました。なによりも大事なものは「信」であると。国民を信じなさいと。この西の御進講を拠り所にして昭和天皇はポツダム宣言受諾(連合国に無条件降伏し、戦争をやめるということ)を選択しました。とても皮肉なことですが、国家主義者が戦争をストップし、平和をもたらしたのです。これが私の本の簡単な解説です。

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