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国際観光ビジネス学科の学びの紹介 ②人間・異文化理解編

2020.07.14

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イスラムの「魔法使い」にインタビュー


みなさん、こんにちは。
ガブリエリ先生による①国際コミュニケーション編に続き、今回は西原先生の②人間・異文化理解編をお届けします。

皆さんに文化の研究をお勧めする理由

先週、ちょうど大雨の日の七月七日、あいにくの天気でしたが七夕でしたよね。七夕と言えば、皆さん短冊に願い事を書いて笹の葉に結んだ思い出がきっとあると思います。では一つお聞きしたいのですが、そのとき短冊は全部で何色ありましたか。歌にもありますからご存じですよね。五つです。では何色かは言えますか。そうですね、答えは黒・青・赤・白・黄の五色。なぜこれらの色が選ばれたんでしょう。ちゃんと理由があります。これらがそろうと「幸せが訪れる」からなんです。だから願い事には欠かせない色になりました。でもなぜこれらの色が幸せをもたらしてくれるんでしょう。

青はちょうどこの時期の田んぼの風景を映しています。見たことがありますよね。次に赤は実りの秋が訪れた頃の色。そして白は精米したお米。最後に黒ですが、これは冬の田んぼの土の色なんです。このように一年を通じて田んぼは色を変え、私たちに生きる糧を与えてくれます。このサイクルが続けば、みんながずっとつつがなく過ごすことができます。つまりこの色のつながりは「幸せの法則」。だから願い事を書く短冊も、それにあやかってこの五色になったのです(黄色については別の長い物語がありますので今日は省きます)。
この「色で幸せをつかもう」という発想は、ある宗教に由来します。それは「風水」。耳にしたことがありますか。昔の中国で誕生したこの風水が日本に伝わり、この国の社会や暮らしにすっかり根付いてきました。干支もそうなんですよ。ねずみ、うし、とら、うさぎ、たつ、へび・・・と全部で12種類の動物が年の名前になっていますが、時計代わりでもありました。例えばねずみは子の刻(ねのこく)といって深夜0時、うしは丑の刻(うしのこく)で午前2時を示していました。そして虎が示す寅の刻(とらのこく)は午前4時です。
また風水では不思議なことに干支と方位が重なっています。ねずみは北を、うさぎは東を表します。ですからその間にあるうしととらは、ちょうど北東をはさみ込むポジションですね。ここで「鬼門」という言葉を紹介しましょう。聞いたことはありますか。災いがやってくる方角のことですね。それがなぜか北東なんです。つまり、うしととらの間。ということは深夜2時から4時の間もまた「怖い」時間というわけです。だからこそ、幽霊たちが出現するのはこの頃になりました。「草木も眠る丑三つ時」はまさにこの時間帯のことです。また「丑の刻参り」もそう。ご存じの方はご存じと思いますが、別名「呪いの藁人形」はこの「危険な」時刻に行わなければなりません。その理由は・・・言わなくてももうわかりますよね。それからこんなことも思い出しました。鬼の姿はいつも頭に角、縞々模様のパンツ。どうしてなんでしょう。うしととらが並んだ隙間に現れるので、二つの動物の特徴を身にまとうおなじみのキャラクターになったんだと思いますよ、きっと。

  • kanko20200714_02.jpg中央アジアの砂漠を移動中に
  • kanko20200714_03.jpg夕暮れのオアシスにたたずむモスク(礼拝所)
    お気に入りの一枚です

いかがですか。私たちの暮らしに息づく様々な習慣、つまり文化にはちゃんと由来があるんです。そして僕はそれを発見することに全力を注いできました。だって純粋にわくわくするじゃないですか、「誕生の瞬間」に立ち会えるなんて。僕にとって文化の研究とはタイムマシンに乗り込んで「世界の成り立ち方」を調べることなんです。でもこの機械は少々ポンコツ、目指す瞬間にたどりつくには僕の直感や想像力が必要です。実はさっきの田んぼの話、鬼のいでたち、どちらも想像が混じっています(推理と言ってほしいのですが)。「短冊って田んぼの色なんじゃない」という連想で、五色の由来を紐解きました。
でも、そうだからこそ、僕は観光やビジネスを学ぶこの学科の皆さんに文化の研究をお勧めできます。「この風景って実はすごく映えるんじゃない」「この広場ならこんなイベントができそう」「若い人に画廊に来てもらいたいならいっそのこと絵をハンガーにつるしてブティックのようにしてみたら」(実話です)。全部「これってあれなんじゃない」という「さっきの」発想ですよね。文化を学べばこんな連想の力がみがかれます。それが観光やビジネスに必要なアイデア力につながるというわけです。
そもそも国際ビジネスのためには異文化理解が欠かせません。例えばイスラムの人たちがお好み焼きを食べられないのはご存じですか。神様が豚肉を禁じられているからですが、ではそれを入れなければOKなのかというとまだ不十分。お好みソースに含まれる醤油や酢もダメなんです。アルコールに近いと見なされることがありますから。イスラムはお酒を許しません。こういう知識を得るためにも文化を学ぶことは必須です。

でも、文化を学ぶ意義は本当はもう一つあるんです。それは何かというと、「生き方」を見つけられること。文化の成り立ちがわかれば、「今はこんな感じだけど、本当はこうだったんだ」と思えます。するといとおしさが募ることもあれば、その反対にがっかりすることだってあるかもしれません。
今ふと思い出しましたが、4年生が就活で着るリクルートスーツ。就活の必須アイテムです。もはや日本の現代文化の一つですけど、あれ、ほんの10数年前に百貨店と就職情報産業が販売促進のために開発したデザインなんです。つまりただの一商品。着用の義務なんて実はどこにもありません。「じゃあ今度の面接では着るのやめようかな」ってなるかもしれませんよね。こんなふうに、文化を学べば、その文化とこれからどう付き合うか見直すきっかけが得られます。そう、文化の研究は自分の「生き方」を探すことでもあるんです。
すごくないですか。文化について考えることは楽しい。ビジネスにも役立つ。そして何より世界の見方が変わり、進むべき道を見出せる。ちょっと話を盛っているんじゃないかと疑われそうですが、挙げた話は全部本当です。僕はこんな文化研究の沼にはまってしまい、ずっと抜けられないでいます。