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エッセー:推計

2020.12.16

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推計:[名](スル)推定して計算すること。推算。【デジタル大辞泉】

世の中には様々な事柄について多くの推計がなされています。それらの中には信頼性が十分でないものも多く含まれますが、中でも人口動態推計は最も正確に我が国の未来の姿を知らせてくれます。
現在の日本が少子高齢化の人口減少社会であることは、すでに皆さんも十分ご存知だと思いますが、『未来の年表』(河合雅司著、講談社現代新書)は、人口動態推計に基づき、我が国の未来に引き起こされる社会問題の本当の姿を明らかにしています。
本書が出版された2017年において、2020年には女性の半数が50歳を超えると指摘していますが、実態はどうだったのでしょうか?2020年11月1日の速報値では我が国の女性の総人口6,456万人のうち、50歳以上は3,250万人と50.3%となっており、当時の推計値が非常に正確であったことが分かります。
本書によると2024年には全国民の3人に1人が65歳以上となり、2033年には3戸に1戸が空き家になるとしています。その他にも本書は人口動態推計を始めとする各種の推計を元に我が国が将来直面する様々な社会問題とその解決策について述べていますが、それら社会問題の根源となる事象を4点挙げています。1点目は出生数の減少。2点目が高齢者の激増。3点目は勤労世帯の激減に伴う社会の支え手の不足。4点目をこれらが互いに絡み合って起こる人口減少であるとしています。本書は『はじめに』の中でこう述べます。『人口減少にまつわる日々の変化というのは、極めてわずかである。「昨日と今日の変化を指摘しろ」と言われても答えに窮する。影響を感じにくいがゆえに人々を無関心にする。だが、これこそがこの問題の難しさなのだ』と。
そのような未来に生きる若い皆さんには、好むと好まざるとに関わらず社会の一員としてこれらの問題に取り組まざるを得ない将来が待ち受けています。
本書で取り上げる様々な未来の姿から我々は誰も逃れることは出来ず、従って立ち向かい、解決していくしかありません。不都合な未来から目を背けていても、顔を上げたときにそれらの問題が消えてなくなってしまっていることはなく、より状況が悪化して存在し続けるのです。責任ある社会人として共に力を合わせて未来の課題解決に取り組む。今、出来ることから、今、すぐにでも。自分たちの手で未来は変えられる。そのための「知恵」と「知識」を大学において身につけ、社会に旅立って欲しい。そんな思いで本書を紹介しました。

公共経営学科 教員
安東直紀

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