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薬学科の最近の研究成果のご紹介

2020.10.07

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本学薬学科 合成化学分野(西村 良夫 講師)、分子細胞生物学分野(久保 貴紀 講師)による共同研究成果「Synthesis of 6-unsubstituted 2-oxo, 2-thioxo, and 2-amino-3,4-dihydropyrimidines and their antiproliferative effect on HL-60 cells」が、「Tetrahedron Letters」誌2020年61巻28号の表紙を飾りました。

Nishimura Y., et al. Tetrahedron _Letters 61, 151967 (2020)

本論文では、ピリミジンの類縁体であるジヒドロピリミジンについて、新しい誘導体の合成法を開発しました。ここでは、3つの成分を触媒量のルイス酸存在下で反応させることにより、一連の 6-無置換 2-N, O, S 置換ジヒドロピリミジンを得ることに成功しました。また、合成した各種誘導体の白血病細胞 HL-60に対する増殖抑制効果を調べたところ、白血病治療薬であるオールトランスレチノイン酸に匹敵するリード化合物(医薬品の元となる「種」)を見出しました。この結果を元に、構造と活性の関係を精査していくことで、新たな白血病治療薬開発への応用が期待されます。なお、本研究は城西大学、東北大学との共同研究成果でもあります。

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また、本学薬学科の薬理学分野(中西博教授、野中さおり助教)からは、歯周病菌とアルツハイマー病に関する研究成果「Secreted gingipains from Porphyromonas gingivalis induce microglia migration through endosomal signaling by protease-activated receptor 2」がNeurochemistry International誌に掲載されました。

Nonaka S, Nakanishi H. Neurochem Int. 140, 104840 (2020)

本研究グループでは、主要な歯周病菌であるジンジバリス菌がアルツハイマー型認知症を増悪するメカニズムを研究しています。論文では、ジンジバリス菌が産生分泌するプロテアーゼ「ジンジパイン」が、脳内免疫担当細胞であるミクログリアのプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を活性化して、遊走反応を促す時の情報伝達経路が解明されました(下図)。この経路は、ミクログリアをジンジバリス菌の近くに引き寄せることで、アルツハイマー病に特徴的な認知機能障害の原因となる脳内炎症を増悪するのに関わると考えられます。よって、本研究の成果は、新規アルツハイマー病治療薬の開発に応用できることが期待されます。

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参考文献
中西 博、野中さおり:歯周病菌とミクログリアの不都合な関係--アルツハイマー病治療のパラダイムシフト--、脳の半分を占めるグリア細胞:脳と心と体をつなぐ"膠"、実験医学別、37巻、17号、73-79 (2019)

Nakanishi H, Nonaka S, Wu Z. Microglial cathepsin B and Porphyromonas gingivalis gingipains as potential therapeutic targets for sporadic Alzheimer's disease. CNS Neurol Disord Drug Targets (2020)