

薬理学分野による研究成果が「Molecular Neurobiology」誌に掲載されました
2021.12.08
本学薬学科の薬理学分野(中西 博 教授)と北京理工大学ならびに九州大学など6大学の共同研究成果「Differential expression and distinct roles of protease-activated receptor 2 in microglia and neurons in neonatal mouse brain after hypoxia-ischemic injury」が「Molecular Neurobiology」誌に掲載されました。(https://doi.org/10.1007/s12035-021-02594-5)
本論文では、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)阻害剤が脳虚血に伴うニューロン死を有意に抑制することを明らかにしました。具体的には、マウス個体ならびにミクログリア・ニューロン共培養系を用いた実験により脳虚血時にミクログリアならびにニューロンのPAR2が活性化され、それぞれ異なった反応を引き起こすことを突き止めました(下図)。ミクログリアのPAR2の活性化は、炎症性サイトカイン(炎症の重要な調節因子)産生分泌とニューロン死を誘導し、ミクログリアによる傷害ニューロンの貪食除去を促進します。また、ニューロンのPAR2活性化は、ニューロンからのケモカイン(細胞遊走活性をもつサイトカインの総称)の産生分泌を促進し、ミクログリアのニューロン傷害部位への集積を促進することがわかりました。このことから、PAR2阻害剤は、①ミクログリアのサイトカイン産生分泌抑制作用により、ニューロンの障害を阻害する作用と、②ニューロンからのケモカイン産生分泌抑制により、ミクログリアの集積及びその後のニューロンの貪食除去を阻害するという2つの作用により、脳虚血時のニューロン死を阻害したと考えられます。本研究成果は、PAR2阻害剤が、脳梗塞時などの脳虚血に伴うニューロン死を抑制することで後遺症を防止するのに役立つなど、医療への応用の可能性が考えられます。