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薬理学分野による研究成果が薬理学分野による研究成果が「Journal of Neuroinflammation」誌に掲載されました

2021.09.03

  • 学科コラム

本学薬学科の薬理学分野(中西 博 教授)と北京理工大学、中国医科大学、ヨージェフ・ステファン研究所(スロベニア)ならびにゲッチンゲン大学(ドイツ)の共同研究成果「Cathepsin H deficiency decreases hypoxic-ischemia-induced hippocampal atrophy in neonatal mice through attenuated TLR3/IFN-β signaling」が「Journal of Neuroinflammation」誌に掲載されました。(https://doi.org/10.1186/s12974-021-02227-7

本論文では、リソソーム性システインプロテアーゼの一種であるカテプシンHの欠損マウスを用いた解析により、カテプシンHが脳内免疫担当細胞のミクログリアによる脳損傷に伴うグリア瘢痕(はんこん、脳の損傷部にみられる治癒痕で、アストロサイトと呼ばれる細胞が代償的に増殖することで生じる)の形成抑制において重要な役割を果たしていることを明らかにしました。具体的には、カテプシンHを欠損したミクログリアではToll様受容体(TLR)3の機能不全が生じており、TLR3活性化を介したインターフェロン-β(IFN-β)の産生分泌が有意に低下していました。IFN-βはアストロサイトの増殖を抑制することから、カテプシンHを欠損したミクログリアにおけるTLR3・IFN-βシグナリングの低下が原因となり、脳虚血に伴うグリア瘢痕の過形成ならびに脳萎縮の抑制が生じることを突き止めました(下図)。グリア瘢痕の過形成は損傷脳の機能再生・回復を阻害することが知られています。このため本研究成果は、カテプシンH発現操作による新たな損傷脳の機能回復治療法など医療への応用の可能性を期待させるものです。

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