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衛生薬学分野による研究成果が「Genes to Cells」誌に掲載されました

2022.01.24

  • 学科コラム

本学薬学科の衛生薬学分野(加藤 貴史 准教授)とJohns Hopkins大学の共同研究成果「Generating a new mouse model for nuclear PTEN deficiency by a single K13R mutation」が「Genes to Cells」誌に掲載されました(doi: 10.1111/gtc.12902.)。

PTENは、脂質やタンパク質に付加したリン酸基を取り除く脱リン酸化酵素です。これまでにPTENの欠損は、がんの発症に関与することが報告されています。細胞膜を構成する脂質の1つであるホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)は、細胞の増殖を促進するシグナルを駆動させていますが、PTENはPIP3の脱リン酸化により細胞増殖を抑制することが主な機能とされてきました。しかし、PTENの機能は細胞内における存在部位によって異なっており、その全容は未だ解明されていません。
加藤らは核内のPTENを欠損したマウス(PTENK13Rマウス)を作製し、その新たな生理機能の解明を試みました。このPTENK13Rマウスでは、様々な臓器のなかで、脳の重量が減少し、小脳の神経細胞であるプルキンエ細胞のサイズが小さくなっていました (下図)。一方、細胞全体におけるPTENの発現量はPTENK13Rマウスと野生型マウスとで大差なかったことから、PTENの核への移行が小脳プルキンエ細胞の大きさを正常に保つ上で必要であることが明らかになりました。
今回の結果は、核内PTENが自閉症などの神経疾患の発症に関与する可能性を示します。今後、核内PTENの機能解析をさらに進めることで、神経疾患の発症予防の糸口が見つかることが期待されます。

参考:Takashi Kato, Atsushi Igarashi, Hiromi Sesaki, Miho Iijima. 26, 1014-1022, 2021.

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