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医療免疫学分野と広島大学による研究成果が「Environmental Microbiology Report」誌に掲載されました

2022.04.22

  • 学科コラム

本学薬学科の医療免疫学分野(村上 千穂 助教)と広島大学の研究成果「Mutualistic relationship between Nitrospira and concomitant heterotrophs」が「Environmental Microbiology Report」誌に掲載されました。(doi: 10.1111/1758-2229.13030)

環境中の微生物の99%は研究室で単離培養できません。本研究で使用された亜硝酸酸化細菌であるNitrospira門に属する細菌は、難培養であることが知られています。この門の菌は、環境中のいたるところに生息するにも関わらず、単離培養に成功したのはわずかに9株です。このため、その生理学的特徴や生態学的な実態はよく分かっていません。
本論文では、Nitrospira門の細菌が、環境中で共存する微生物と相互作用することで増殖が制御されていることを世界で初めて明らかにしました。特に、共存する従属栄養細菌がこの門の細菌に増殖促進物質を供給していることを証明しました。
以上のことは、ある種の菌の単離培養が困難な原因の一因が微生物を単離するという操作そのものにあることを示します。また、異種の細菌との共培養や、細菌由来の増殖促進物質の添加で、難培養性微生物が培養できる可能性が出たことで、有用な物質を産生するなど人類に役立つ微生物が見つかる可能性が広がったといえます。

参考: Chiho Murakami, Koshi Machida, Yoichi Nakao, Tomonori Kindaichi, Akiyoshi Ohashi, Yoshiteru Aoi. Environ.Microbiol.Report, 14, 130-137, 2022

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本研究で得られた結果

Nitrospiraを、ある種の従属栄養細菌と共培養すると、増殖が促進されました(左)。また、Nitrospiraをこれと共存することが知られる様々な種類の従属栄養細菌と共培養したところ、単独での培養時に比べ、培地中に多く産生される物質が見つかり(赤矢印)、増殖促進物質候補となりました。