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薬理学分野による研究成果が「Aging Cell」誌に掲載されました

2022.06.14

  • 学科コラム

本学薬学科の薬理学分野(中西 博 教授)と北京理工大学ならびに九州大学など4大学との共同研究成果「Microglial cathepsin E plays a role in neuroinflammation and amyloid production in Alzheimer's disease」が「Aging Cell」誌に掲載されました。(https://doi.org/10.1111/acel.13565

脳炎症やベータアミロイド(Aβ)の産生は、アルツハイマー病の発症・増悪を促すと言われています。本論文では、脳内の免疫担当細胞であるミクログリアの産生するリソソーム性タンパク質分解酵素「カテプシンE」がアルツハイマー病モデルマウスにおいて、脳炎症反応ならびにAβ産生促進を介して認知機能障害を増悪することを明らかにしました(下図参照)。
以上の研究成果は、カテプシンEの阻害剤が、アルツハイマー病の予防・治療薬となりうることを示します。経口投与で脳実質に到達可能なカテプシンE特異的阻害剤の開発が期待されます。

参考:
1. Zhen Xie, Jie Meng, Wei Kong, Zhou Wu, Fei Lan, Narengaowa , Yoshinori Hayashi, Qinghu Yang, Zhantao Bai, Hiroshi Nakanishi, Hong Qing, Junjun Ni. Aging Cell, 21, e13565, 2022.

2. Hiroshi Nakanishi. Cathepsin regulation on microglial function. BBA-Proteins and Proteomics 1868, 130465, 2020

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図:本研究で明らかにされたカテプシンEによるアルツハイマー型認知症の増悪経路

カテプシンEは、ミクログリア細胞膜から切り出されて分泌型になったTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)及び、受容体DR5を介して、ミクログリアでは脳炎症反応を誘導し、海馬ニューロンではAPP産生酵素BACE1の発現促進を介してAβ産生を促進することが明らかになりました。