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分子細胞生物学分野による研究成果がScientific Reportsに掲載されました

2020.08.18

  • 学科コラム

本学薬学科の分子細胞生物学分野(平野真 講師)と慶應義塾大学、長岡技術科学大学、東京工業大学との共同研究成果「Detachment of cell sheets from clinically ubiquitous cell culture vessels by ultrasonic vibration」が、「Scientific Reports」に掲載されました。 (https://doi.org/10.1038/s41598-020-66375-1)

論文では、超音波を照射するだけで汎用培養容器から細胞シートを剥離する技術を開発しました。細胞がシート状に繋がった細胞シートによって、再生医療における培養細胞の体内への移植効率が向上します。これまで細胞シートの作製には、温度応答性ポリマーをコーティングした特殊な細胞培養ディッシュにおける低温培養が必要でした。一方、開発した技術では、超音波を用いることで、一般的な培養ディッシュやフラスコにおける適切な培養温度での細胞シート生成が可能になりました。平野講師が担当した細胞内外のタンパク質の安定性評価により、既存技術と同程度に細胞へのダメージが低いこと、また、代謝試験により、剥離後の細胞シートの代謝活性が既存技術よりも高いことが示されました。培養温度の保持と一般的な培養容器の使用により、活性の高い細胞シートを安価に作製でき、臨床試験が進む再生医療を広く普及させることに大きく貢献する基盤技術となります。

なお、本研究内容は科学新聞(2020年6月28日)と日経産業新聞(2020年7月14日)にて取り上げられました。

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超音波照射によりディッシュから剥離した細胞シート (左)。
細胞シートを剥離し、再培養したときの代謝活性 (右)。既存技術:温度応答性ポリマー。