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薬学部4年生の根川向日葵さんが第65回 日本生化学会 中国四国支部例会で学生優秀発表賞を受賞

2024.07.22

  • 学科コラム

2024年(令和6年)6月1日(土)-6月2日(日)に島根大学松江キャンパスで開催された「第65回日本生化学会中国四国支部例会(実行委員長:島根大学医学部 宮城聡教授)において薬学部4年生の根川向日葵さんが学生優秀発表賞を受賞しました。中国四国9県の生化学研究者が一同に会する伝統ある学会で、対象者30名(国立大学大学院生28名、私立大学学生2名)から、参加者の投票により3名が選ばれ、根川さんは唯一の私大生でした。安田女子大学薬学部の学生受賞は昨年に続き2回目です。

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研究の概要

演題  Labile HemeによるRSL3誘導性Ferroptosisの促進

2012年に新たに提唱されたフェロトーシス(Ferroptosis)は鉄依存性細胞死で、近年、がん細胞に対する抗がん薬の感受性などに関わることから注目されています。しかしながら、生体内の主たる鉄であるヘムの関与は不明です。本研究では、ヘム動態と密接に関係する転写因子BACH1のノックアウト細胞に対してフェロトーシスを誘導したところ、遊離ヘム(Labile Heme)の上昇を伴う細胞死の増悪化という結果を得ました。すなわち、BACH1は細胞内遊離ヘムを巧妙に制御しており、ノックアウト細胞においては異常に増加した遊離ヘムによりフェロトーシスが促進される可能性が示唆されました。

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指導者による受賞者の紹介

根川さんは1年生の薬学概論で薬学研究に興味を持ち、放課後や長期休暇を活用して実験に励んでいました。現在薬学部4年生ですが、研究歴は大学院生に匹敵すると思います。研究成果を少しずつ挙げて、今回初めて学会発表をすることになりました。口頭発表に向けて、スライド原稿の作成等、自ら準備をし、放課後に何度も練習を重ね、発表内容を充実させました。生化学会の口頭発表では、専門家による質問に答えなければなりませんが、誰もが納得できる答弁をした結果、受賞者に選ばれたと思います。根川さんは学業も疎かにすることなく、優秀な成績を収めています。安田女子大学薬学部の将来を担う人材として、期待しているところです。

安田女子大学大学院薬学研究科長 赤木玲子


受賞者・根川さんへのインタビュー


受賞者・根川向日葵さんに日々の研究活動や今回の研究内容についてお話しして頂きました。

今回受賞された研究テーマの魅力について教えて下さい。

当研究室のボスである赤木先生はヘムによる細胞の酸化ストレス応答や熱ショック応答について研究されています。私は、ヘムによってその活性が制御される転写因子であるBACH1の機能について調べています。BACH1は細胞の老化やがん化に関わると言われており、近年注目されている分子で、まだ明らかになっていないことがたくさんあるのが魅力だと感じています。

今回の研究テーマに至るきっかけは何だったのでしょうか?

赤木先生が細胞のストレス応答を研究されている一方、辻先生は細胞死について研究されています。最近はフェロトーシスについて着目し、研究されています。フェロトーシスは細胞内で鉄が過剰になることによって引き起こされる細胞死で近年大変注目を集めている分野です。フェロトーシスとBACH1の間にどのような関係があるのか、BACH1はフェロトーシスが引き起こされるとどのように働くのか調べてみようと思ったのがきっかけです。そうして調べていくうちに、過剰な鉄がフェロトーシスの原因であることだけではなく(この事実はもともと分かっていたこと)、鉄を含有している分子のヘムが過剰になった状況下でもフェロトーシスが促進されることを見出しました。そしてこの内容で今回の学会発表をしました。

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研究中の心に残ったエピソードがあれば教えてください。

赤木先生はしばしば、とりあえず目の前のことをやってみたら、見ている視界が変わるために、新しいことに気付くことができる、という意味で" Climb every mountain"という言葉を引用されることがあります。なかなか思うように実験が進まないとき、赤木先生の○○やってみたら~という提案で、意外で新しい可能性を示唆するような結果を得ます。これは学会後のつい先日の話ですが、ついでにこれも試しておこうとしかけた実験で、予想もしていなかった結果が出て、次につながりそうなのでやってよかったと思いました。そして" Climb every mountain"がより心に刻まれました。このことは、違う山に登ったことで新しい視点からBACH1を見つめ直すきっかっけになるだろうと思った出来事でした。

今後、研究にどう携わっていきたいと考えていますか?

BACH1の機能についてさらに調べていこうとしています。(具体的には、フェロトーシスが引き起こされた状況における働きに加えて、熱ショック応答 -かねてから赤木先生が取り組まれていたこと- にどのように関与するか)いずれ、BACH1のフェロトーシスや熱ショック応答に対する関与についてまとめて論文を出すことを目標にしています。