怪我をしたときや、体調がすぐれなかったとき、あるいは人間関係に悩んだとき。保健室の先生の手当てや配慮、アドバイスに、助けられたと思ったことがある人も多いのではないでしょうか。そんな「保健室の先生」は、養護教諭の免許を持つ先生です。
養護教諭は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校で子どもの健康管理と保健指導を行っています。近年では、保健室に来る子どものニーズは多様であり、子どもたちの身体的・精神的健康を維持するために、個々の子どものニーズに応じたサポートをしているのが養護教諭です。
特に、思春期の子どもは身体的不調を訴えて保健室を訪ねることが多くなりますが、その背景には心理的な問題、たとえば学校での人間関係や勉強、進路・受験、家庭の問題などの心の悩みが隠れていることが少なくありません。そのような子どもの悩みにまず耳を傾けることができるのが養護教諭です。養護教諭の受容的な態度によって、子どもは心を開いて悩みを打ち明けることができるようになります。
そして、養護教諭からのアドバイスをきっかけとして、心と身体のバランスを回復していくことがあります。
養護教諭になるには、養護教諭免許状の取得が必要です。大学や短大の看護学部、看護専門学校で所定の科目を履修して保健師の免許を取得するか、養護教諭養成課程のある大学や短大で所定の科目を取得することによって、養護教諭免許状が取得できます。
その後は、公立学校の場合は都道府県の教員採用試験、私立学校では各学校の採用試験を受け、採用されれば保健室の先生として働くことができます。ちなみに、広島県・市では、ここ数年、毎年40名程度の養護教諭が採用されています。
本学では、養護教諭免許状の取得に3通りの方法があります。
心理学部 現代心理学科で取得する
2020年4月 養護教諭養成課程を開設
小・中・高等学校では、心のケアを必要とする児童・生徒が増えており、保健室の先生、すなわち養護教諭が、学校の教育相談において中心的な役割を担うことを期待されています。こうした背景から、心理学部 現代心理学科では、2020年4月に「養護教諭一種免許状」を取得できる養護教諭養成課程を開設しました。
学校保健活動全般の知識・技能・実践に加え、児童・生徒の心理を理解し、健康増進に向けた指導や教育ができる養護教諭を養成します。
2020年度入学生から現代心理学科で取得可能な教員免許
心理系養護教諭の強み
- 心身の健康状態への気付き
身体の不調を適切にとらえ、心身相関を考える - 傾聴し、心により添う
子どもの言葉に耳を傾け、心により添う講義と演習 - 多角的な子どもの理解
人間理解の方法(観察・面接・実験・検査)を実習 - 子どもの人間関係力を育成
人間関係力や生きる力を伸ばすプログラムの学修と体験 - 保護者・教職員等との連携
保護者を支援し、教職員・関係機関との連携を考える
現代心理学科のカリキュラム(代表例)
基本科目・卒業研究 |
「心理学概論」「心理学研究法」「健康科学」など |
発達・教育領域 |
「発達障害の理解と支援」「教育相談の理論と方法」「司法・犯罪心理学」など |
社会・対人関係領域 |
「社会・集団・家族心理学」「対人関係論」「コミュニケーション心理学」など |
健康科学領域 |
「人体の構造と機能及び疾病」「健康・医療心理学」「精神保健」など |
臨床心理学領域 |
「感情・人格心理学」「心理学的支援法」「心理療法」など |
学校保健領域 |
「養護概説」「学校保健」「看護学臨床実習」「養護実習」など |
教育学部 児童教育学科で取得する
教育学部で学んだ養護教諭の強み
児童教育学科では、子どもの成長・発達の過程やその課題を知り、小学校教諭、幼稚園教諭、保育士のそれぞれの役割を学んだ上で、進路に応じた知識・技能を身につけます。
教育・保育はチームプレーです。教職論、教育原論、幼児教育学、発達心理学など、教育現場で必要な知識を習得し、子どもの成長過程や発達段階における課題、さまざまな教育者の役割を知っていることが、将来の強みとなります。
- 2021年度入学生から保育士資格および小学校教諭二種免許状に代えて、他学科の教職課程を履修し、養護教諭一種免許状を取得することが可能です。ただし、幼稚園教諭一種免許状を取得することが前提です。
看護学部 看護学科で取得する
看護師や保健師の資格に加え、養護教諭二種免許状の取得が可能
看護学科では看護師国家試験受験資格はもとより、必要な科目を履修することで、保健師国家試験受験資格ならびに養護教諭二種免許状の取得が可能です。
- 養護教諭二種免許に必要な単位を修得し、保健師免許取得後の申請により取得可能です。ただし、保健師養成課程は選択・学内選抜制です。
子ども一人ひとりへの柔軟な対応を支える専門知識と実践力
看護学科では、医療・看護現場での豊富な経験と大学での十分な教育・研究実績を持つ教員が学生を指導します。救急対応やアレルギー対応をはじめとする専門知識は、子ども一人ひとりの個別対応が望まれる養護教諭の現場で必ず重宝されます。
また、1年次から臨地実習に参加し、授業で学んだ知識や技術と実際の病院や施設などで求められていることを統合させ、実践力を磨きます。教科書では学ぶことのできない医療現場での経験は、看護学科ならではの特徴です。