• 学科ニュース

英国レディング大学院で修士号(英語教授法)を取得して(卒業生の便り)

2018.04.12

  • 学科コラム

eibun20180412_00.jpg

平成23年度卒業の川元彩香さんに、HPに寄稿していただきました。卒業後、高校の英語教員として頑張っている卒業生の姿をご紹介できたらと思います。以下、お便りをそのまま紹介いたします。

eibun20180412_01.png

安田女子大学で外国語(英語)の教員免許を取得後,広島県立の公立高校で英語教師として働き,2016年9月から1年間の自己啓発休職をいただき,イギリス・ロンドン付近のレディング大学院(Reading University)でTESOL(Teaching English to the Speakers of Other Languages:英語教授法)を学ばせていただき,修士号を取得しました。 留学をした理由は,自分の英語力向上と,論文や理論に基づき,生徒が実戦的な英語力を習得できる授業を行いたいと思っていたからです。留学前の準備として,イギリスの大学院の説明会に参加し受験大学を決めたり,IELTSスコア7の取得,personal statement(志望動機)やCV(履歴書)の作成,また大学の先生と高校の英語科主任に推薦状を書いていただきました。そして,英語学習としてイギリス人の友人とのスカイプでの英会話,月に一回3000字のエッセイを作成し,ALTに指導をしていただきました。

eibun20180412_02.jpg

数多くあるイギリスの大学院からレディング大学院に進学した理由は,様々な授業を受講することができたからです。第二言語習得理論はもちろんですが,English in the worldという授業を受講し,イギリス・アメリカ主導の英語から今現在世界で使われている各国の英語がどのように変化し,今後どう変わっていくのかを学びたかったからです。9月から12月の秋期タームでは第二言語習得理論,音声学,英文法,談話分析を受講し,1月から3月の春期タームでは英語学習カリキュラム作成,English in the world,修士論文作成のためのリサーチデザインを受講しました。4月から9月は授業がなく,15,000字の修士論文の作成を行いました。

eibun20180412_03.jpg

一番苦しくも楽しかったのはやはり修士論文の執筆でした。私は"British and Chinese Listeners' Perceptions of Japanese English Speech: Segmental features affecting intelligibility" というテーマで半年間リサーチを行いました。リサーチクエスチョン「① 日本人の英語をイギリス人と中国人が聞くと,Intelligibility(聞き手によって,どの程度実際に理解されたか)に違いがあるのかどうか」に対して,日本人英語学習者の英語をイギリス人と中国人とディクテーション(聞こえた英語を書き取る)とcomprehensibility(わかりやすさ)・the perception of pronunciation (発音の認識;acceptability・容認性,pleasantness・快適性,correctness・正確性,the speech rate・話す速度)を9段階のリッカート尺度で測りました。リサーチクエスチョン「②日本人英語話者が習得困難だと仮定されている英語の母音・子音(r,l,wなど)が,実際にイギリス人と中国人にとって,どのように理解されるか」に対しては,ディクテーションの結果,聞き間違いがあった英単語を分析し,日本人英語学習者にとって,ネイティブあるいはノンネイティブ英語話者と英語でコミュニケーションを取る際に優先すべき発音指導をまとめました。リサーチの結果,イギリス人の方が中国人より日本人アクセントがある英語をよく理解している傾向があることがわかりました。ネイティブ英語話者の方がアクセントに対してより寛容な態度を示し,一方でノンネイティブ英語話者の方はネイティブ英語話者の発音に慣れており,イギリス・アメリカ英語発音とは違ったアクセントに対して敏感に反応し,その結果,コミュニケーションの問題に繋がることが示唆されました。また,日本人英語学習者が習得困難とされている音素は,イギリス人・中国人にとって聞き間違いを引き起こした原因となっていることがわかり,聞き手のintelligibilityに影響を与えた音素に優先順位をつけて発音指導をするという提案をしました。修士論文の成績はdistinction(75%)をいただき,今は,世界的にも有名な雑誌TESOL QUARTERLYに投稿するために,再編成・編集に取り組んでいます。この経験をもとに,英語の発音指導とともに,ネイティブ・ノンネイティブ英語話者に対して伝わる英語の語彙選択・内容・構成に特化したアウトプット活動ができる授業を追求していきたいです。

eibun20180412_04.png