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寒鼈 富永一登

2016.09.27

  • 学科コラム

「寒鼈炙熊蹯」(スッポンをあぶり熊の掌を焼く)。魏の曹植が楽府詩「名都篇」(『文選』巻二七)に詠う快楽に耽る若者の美食である。李善注によれば「寒」は「韓」と音通、戦国時代の韓(河南省)の肉を焼いた料理「韓羊」「韓鶏」と同じ。曹植は「七啓」(『文選』巻三四)でも亀を焼くのを「寒」で表す。詩語へのこだわりが見えて面白い。五臣本は「寒」を「炮」に変える。わかりやすいが、味気ない。改めて一字の大切さを感じた。
(安田女子大学日本文学会『会報』25号から転載)

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